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照明デザイン賞受賞者一覧 1998年~2021年

 照明デザイン賞は、光を素材とした、優れたデザイン的内容を持ち、創意工夫に満ちた作品を顕彰するものであり、近年、国内に竣工した空間に対する光環境や照明デザインにおいて、社会的、文化的見地からも極めて高い水準が認められる独創的なもの、或いは新たな照明デザインの可能性を示唆するもので、時代を画すると目される優れた作品を称え表彰するものです。

2021年 照明デザイン賞 講評

総評

応募総数は55作品を数え、第一回審査会(1~3次審査)によって段階的に絞られた10作品が現地審査の対象となった。コロナ禍により多少の不便さはあったものの審査は順調に行われ、2名の審査員が現地に赴き関係者の熱心な説明を受けた。第二回(最終)審査会では各審査員の報告を受けた後活発な議論が交わされ、採点も含め3回にわたる決選投票を経て受賞者が決定した。どの作品もコンセプトが明快で、時代のニーズに応えこれからの照明の可能性を広げるものであった。

(審査員長 富田泰行)

最優秀賞:玉川髙島屋S・C 本館グランパティオ

撮影:阿野太一

受賞者:
永山 祐子(有限会社永山祐子建築設計)
岡安 泉(株式会社岡安泉照明設計事務所)
前田 知希(大光電機株式会社)
作品関係者:
事業主:
東神開発株式会社
設計・監修:
有限会社永山祐子建築設計
設計・監理:
株式会社日本設計
施工:
東急リニューアル株式会社
照明設計:
株式会社岡安泉照明設計事務所
照明制作:
大光電機株式会社

作品コンセプト:

 商業施設の共有部の改修プロジェクトである。訪れた人に本やアートとの新たな出会いをもたらす、大きな吹抜け空間を、時に公園のような、時に書斎のような親密な場所にしたいと考えた。親密な場所とする仕掛けとして、「光の群像」をつくろうと考えた。669個の電球と1338本のコードにより天井全体にボールト形状を構成。斜め40度の2本の細いコードにネックレスのように一つの電球をつっている。白い線が重なった集合体が雲のように頭上を覆い電球によって照らし上げられる。一番長い5mのコードを弛まないよう綺麗につるすため必要となるおもりの重量計算と実験を繰り返した。また、アクリル球の内部で反射光を集めるために削り取られた窪みの形状が眩しく見えないよう、また空間に歪な反射を生まないよう配慮しながら試作を重ねた。2本のコードのうち通電していない1本にSUSワイヤーを入れ、落下防止の安全対策にも細心の注意を払っている。

講評:

 本館中央1・2階吹き抜け大空間の改修プロジェクトである。改修前の空間に不足していた「明るさ」と「居心地の良さ」を作ることを目指した。まず目に入るのは、天井から吊り下げられた透明な電球によるダイナミックな光のネックレスの数々である。直径6センチのアクリル球の内部を30度の円錐形に削って、4.5WLEDの光を眩しく見えないよう床面に反射させて均一な明るさを得た。一番長いコードは5m。コードがたわまずにV字を保つ重さを備えた669個の電球で、ボールト形状の星空のような光天井が構成されている。心配なのは安全性であるが、V字に吊ったコードと直角方向にワイヤーを張って揺れを吸収する、V字のコードのうち通電していない1本にSUSワイヤーを入れて落下を防止するなど、細心の注意が払われている。憩いの場として、書斎として、時には舞台としての役割を担う場づくりを成功させた繊細な光の裏に、スマートな技術と地道な検証を見た。

(近田玲子)

優秀賞:銀座駅リニューアル

撮影:Nacasa & Partners Inc.

受賞者:
松下 美紀(株式会社松下美紀照明設計事務所)
中村 元彦(株式会社松下美紀照明設計事務所)
須賀 博之(株式会社日建設計)
作品関係者:
事業主:
東京地下鉄株式会社
建築設計:

向井 一郎(株式会社日建設計)
大場 啓史(株式会社日建設計)
大森 拓真(株式会社日建設計)
小島 正直(株式会社交建設計)
山代 順一(株式会社交建設計)

作品コンセプト:

 「伝統と先端」をテーマに改修が進められた銀座線。銀座駅では「人とメトロと街をつなぐ光」をコンセプトに、誰にでも分かりやすい空間を目指した。多様な利用者が容易に理解できるように、乗り入れる3路線からイメージされた形状“〇、△、□”と、路線カラーの“黄、赤、シルバー”をコアとして照明デザインを行い、それらは柳の木をイメージした光柱や開業時の鉄鋼框を見せる光壁、そして天井や上屋のデザインに取り入れている。

講評:

 まちの彩りが地下に染み渡ってきたかのような華やいだ公共交通空間が誕生した。土木構造物の厳しい与条件の中で「誰にでも分かりやすい空間」を共通テーマに掲げ、安全性と快適性を追求した地下空間である。乗り入れる3路線の空間構造と路線カラーをモチーフにした光の形態や色彩は地下動線に明快なオリエンテーションを与えている。他方、建築素材や仕上げは上質感のあるダーク系であるため明るさ感の獲得にかなり腐心したようだ。柱巻き、光壁、ホーム対向壁など鉛直面の明るさ確保や明暗によるアイキャッチ性や視線誘導など光の手法にも様々な工夫が見られたことも高い評価につながった。

 「明るければ駅は安全だ」という考えはもう過去のものである。駅は乗降、移動を主体とする都市交通の結節点であるが、今では休息やコミュニケーション、更にはワークスタイルの変化から多様性が求められてきている。本プロジェクトはこれからの駅のあり方に一つの指針を与えるものである。

(富田泰行)

優秀賞:旧富岡製糸場西置繭所

撮影:加藤純平

受賞者:
齋賀 英二郎(公益財団法人文化財建造物保存技術協会)
飯塚 千恵里(飯塚千恵里照明設計事務所)
作品関係者:
事業主:
富岡市世界遺産観光部
建築設計:
株式会社森村設計

作品コンセプト:

 国宝旧富岡製糸場西置繭所(2014年に世界遺産一覧表に記載)は、翌2015年から6年の歳月をかけて保存修理及び整備活用工事が行われた。耐震補強鉄骨とガラスボックスが新たに設置された1階のギャラリーとホールでは、照明器具は来館者の目に触れない位置に設置するか、極限までグレアを抑えて目立たない様配慮した。建築の価値を維持・保存しながらさらにその魅力を引き出し、見学と鑑賞ができる空間の創出をコンセプトとした。

講評:

 日本の近代化を、機械による生糸の量産化と高い品質管理により、1987年の閉業までこの国を支えた拠点であったことから、2014年に世界文化遺産として登録され、その保存・公開のための保存整備工事に伴う照明デザインが評価された。

 国宝旧富岡製糸場西置繭所は、収穫された1年分の乾燥した繭を保管する、貯繭(ちょけん)のための、東西2棟のうち1棟の倉庫である。正門から敷地に入ると、まず外観を特徴づける木柱の構造と、煉瓦の壁が見えてきて、夕暮れ時にライトアップされた姿を想像させる。建物内へ入ると、「保存」のための耐震補強の鉄骨と、ガラスによって覆われた展示ギャラリーが現れる。さらに2階へ上がると、製糸場最盛期の姿に復原された展示空間を見ることができる仕組みだ。国宝の文化財建造物と、国産の製糸産業遺産の歴史を読み解くミュージアムとして、超高演色性能を有し、かつグレアを制御したスLED ポットライトを使用することで、良質な展示空間が生まれた。

(木下史青)

優秀賞:高輪ゲートウェイ駅

受賞者:
窪田 麻里(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
中村 美寿々(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
山本 雅文(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
東日本旅客鉄道株式会社
プロジェクト統括:
東日本旅客鉄道株式会社 東京工事事務所
電気工事統括:
東日本旅客鉄道株式会社 東京電気システム開発工事事務所
デザインアーキテクト:
隈研吾建築都市設計事務所
建築設計・監理:
株式会社JR東日本建築設計

作品コンセプト:

 折り紙を模した大屋根が広々としたコンコースとホームを一体的に覆う駅舎は、近い将来、周辺大規模開発街区の中核となる。心地よい駅空間の創出と、新しい街のランドマークとなる光をめざした。

 障子をイメージした膜屋根により、日中は駅全体が柔らかな光に包まれ、日没後は徐々に内部から温かな光がこぼれでる。照度確保に特化した均一な照明ではなく、利用者がその瞬間を感じ取れるよう、時間に寄り添って変化する照明が必要であると考えた。開放的な建築空間を引き立てる照明計画と、利用者数と天候の変化を考慮して設定された調光調色の7つのシーンオペレーションによって、“新しい駅舎の光”を実現した。

講評:

 1971年に開業した西日暮里駅以来、およそ50年ぶりの山手線の新駅という非常に難しいプロジェクトである。この半世紀の間に、駅のあり方は大きな変化を遂げ、単なる交通施設から街との関係を再構築する拠点として位置づけられるようになった。本駅は、交通機能の本丸である1Fのホーム階、2F・3Fのコンコース・店舗、それを覆うETFEの幕屋根という水平な3層構造に対し、風雨を防ぐためのカーテンウォールが取り付けられているという構造となっているが、照明は、前者の3層を美しく浮かび上がらせることによって、あたかも街に開かれた屋根のある広場であるかのような、21世紀の駅のあり方を実現している。さらに、そのような光環境の文化的な意義だけでなく、自動的に制御される調光調色によって、人工環境と自然環境という認知の境界に対して揺らぎを与えるような仕組みであったり、幕屋根の大きな気積を体感できるホーム階の吹抜によって生じる天井高の違いを感じさせない安定的な光環境の実現など、高い技術水準も同時に評価された。

(川添善行)

入賞:嘉麻市庁舎

撮影:八代写真事務所

受賞者:
須田 智成(株式会社久米設計九州支社)
永野 孝之(株式会社久米設計九州支社)
福田 哲也(株式会社久米設計九州支社)
作品関係者:
事業主:
嘉麻市長 赤間幸弘
建築設計:
福田 光俊(株式会社久米設計九州支社)
清水 章太郎(株式会社久米設計九州支社)

作品コンセプト:

 熊本地震直後(2016年4月)に計画が始まり、合併特例債活用期限内(2020年3月)の竣工が求められた福岡県嘉麻市の新庁舎の計画である。この時代背景に対して実直に応答するため、安心・安全性確保とイニシャルコスト縮減を両立した合理的な建築のあり方を追求した結果、無駄なものが削ぎ落とされたコンクリートの「矩形」が残った。

 力強く美しい躯体を引き立たせる光環境を形成し、建築コンセプトを純化させることを意図した。

講評:

 クリア塗装の打放しRC直天井にぼんやりと映る外光や人工光は、利用者の外部との繋がり感や開放感を高めるとともに、室奥から見た窓面と室内表面との輝度対比を緩和し窓面のまぶしさを低減する。また、西日対策機能を持つ縦軸木ブラインドは夜間に適度な明るさにライトアップされ、昼夜の建物正面の外観を効果的に印象づけている。公共建築として簡素でありながら、建築と一体としてデザインされ、良質な光環境が実現されている。

(原直也)

入賞:ののあおやま

受賞者:
窪田 麻里(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
岩永 光樹(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
永田 恵美子(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
青山共創株式会社
山下 文行(東京建物株式会社 住宅賃貸事業部賃貸住宅事業推進グループ)
弘中 陽介(三井不動産株式会社 開発企画部開発企画グループ)
中村 達也(三井不動産レジデンシャル株式会社 賃貸住宅事業部事業室)
建築設計:
田村 慎一(鹿島建設株式会社一級建築士事務所)
デザイン監修:
隈 研吾(隈研吾建築都市設計事務所)
ランドスケープデザイン監修:
平賀 達也(ランドスケープ・プラス)

作品コンセプト:

 青山の森に「安全な明るさと快適な暗さの共存」を目指す光環境が出現した。高層住宅やサービス付き高齢者住宅、保育園、店舗が入った低層建築を、約3,500 ㎡の緑やビオトープを小径で繋ぐ大規模緑地が囲み、豊かな自然が生きる青山の生活環境を形成している。建築とランドスケープのデザインと一体化し、光環境を同次元で設計することにより、「ののあおやま」の夜景は青山の文化と品格を表現しブランド化することに成功した。

講評:

 豊かな緑とビオトープのある青山の森に「安全な明るさと快適な暗さの共存」を図り、ボラードとポールスポットで安全のための足元明かりを確保し、視点のポイントとなる樹木とビオトープに光を絞ることで、森に快適な暗さを作り出している。「暗さのデザイン」であるとも言える。建築とランドスケープを光で繋ぎ、敷地全体に一体感を作り出しながらも、それぞれの光は細部まで練られており、上質で心地よい空間に仕上げられている。

(原田武敏)

入賞:大正大学8号館

撮影:株式会社エスエス東京

受賞者:
堤 裕二(株式会社大林組 設計本部 建築設計部)
佃 和憲(株式会社大林組 設計本部 建築設計部)
小山 岳登(株式会社大林組 設計本部 設備設計部)
作品関係者:
事業主:
学校法人 大正大学
照明設計:

猪股 寛(パナソニック株式会社 ライティング事業部)

作品コンセプト:

 図書館やラーニングコモンズを核とする学修拠点に、地域交流を促すブックカフェ等を加えることで、地域に根差し、ずっと居たくなる学びの場となることを目指した。自然光が降り注ぐ日中から、日没とともに間接照明による落ち着いた空間へと時の移ろいを感じることができる。仏教由来のある七宝繋ぎから着想を得た七宝パネルが行燈のように、建物内や地域を照らし、仏教精神を基調とする大学のアイデンティティを体現させた。

講評:

 七宝紋様のスチールパネルに包まれた外装はシャンパンゴールドで彩られ、昼は明るく煌びやかな印象を受ける。しかし夜、七宝紋様の背後に仕込まれた明かりが灯ると、外装の色は闇に消え、仄かに灯る行燈のような姿へと変わる。昼と夜の表情の違いが印象的である。館内もトップライトによる昼光やベース照明のある昼のシーンから間接照明が浮かび上がる夜のシーンへと移り変わる等、細やかな光の配慮が行われている点も評価された。

(原田武敏)

審査員特別賞:熊本城特別見学通路

撮影:益永研司写真事務所

受賞者:
塚川 譲(株式会社日本設計九州支社)
鬼木 貴章(株式会社日本設計九州支社)
岩永 朋子(株式会社遠藤照明)
作品関係者:
事業主:
熊本市

作品コンセプト:

 被災した城内に点在する歴史の遺構や震災での崩落箇所、既存樹木を避け、針の穴ほどの空間を繋ぎ合わせて行く作業を繰り返すことで創られた全長350m、高低差21mの一筆書きの柔らかな弧を描いた見学通路。熊本城の環境と一体となった佇まいを目指すため、そのダイナミックかつ繊細な流れを、途切れることのない連続した光で照らすことで、その形状や構造の美しさを表現し、建築同様に熊本城の夜景に寄り添う照明デザインを目指した。

講評:

 見学通路全長350mの照明デザインは、通路片面に配置されたライン照明で構成され、その光が檜のデッキ床面を柔らかく照らしている。反射光が対面の欄干部の白いフェンスに反映し、高低差21mの空中歩廊がまるで光により浮遊しているような印象を与えている。ライトアップされた熊本城と光の対比を上手く構成させており、これから先、長きに亘って復興工事を続ける熊本城跡へ優しく寄り沿った心に響く光環境が創出されている。

(松下美紀)

2020年 照明デザイン賞 講評

総評

応募総数は52作品で1~2次審査を経て現地審査対象となったのは11作品。審査員(2名ずつ)が各地に赴き関係者の説明を受けながら審査を行った。今回は外部から審査員を迎えたことで照明デザインの間口や奥行をさらに広げることができたのではないだろうか。最終審査では活発な議論が交わされ厳密かつ十分な選考過程を経て、8作品が受賞の栄誉に浴することとなった。どの作品も明確なテーマと優れたデザイン性を有し、これからの照明に新たな視座を与えるものであった。

(審査員長 富田 泰行)

最優秀賞:武蔵野美術大学 ZERO SPACE

撮影:NACASA&PARTNERS INC.

受賞者:
山下 裕子(Y2 LIGHTING DESIGN Co., Ltd.)
作品関係者:
事業主:武蔵野美術大学
デザイン:五十嵐 久枝(イガラシデザインスタジオ)稲垣 竜也(イガラシデザインスタジオ)
施工:清水建設

作品コンセプト:

 「ZERO SPACE」は武蔵野美術大学内にあり、進路のWEB検索スペースから、多様な用途に対応できる「場」へのコンバージョンである。東西2面が35mのガラスで外光がたっぷり入るコンクリート建築の1階。 外の景色が素通しで、開放的だが通路の様に無意識だった空間を、「場」として意識する仕掛けとして、天井のあり方を検討し、白い“ゼロ”を浮かべた。アートやデザインを学ぶ学生達に向けて、アイディアが誕生する「始まりのゼロ」という想いの形でもある。“ゼロ”はスケルトンの黒天井を背景に、グレアレスな人工光と自然光の床反射を受け、自身が発光している様な視覚効果で空間の核になっている。また照明回路をゼロの内と外、配置をゼロに沿わせ、大きな「光のゼロ」のバリエーションで4シーンを構成し、自然光の変化に合わせてゆっくりチェンジさせ、時間を持つ空間にした。美大らしい新しい創造空間の「場」として運用されている。

講評:

 ブラック&ホワイトのコントラストがひと際目を引くフォトジェニックな空間である。それが現地に行くと単なる写真映りのよい作品でないことに気づかされた。一見では照明器具が見えないのにゼロ天井と石ころベンチが発光して見える。この場所はかつてMACが列を成して置かれていた学生達の情報拠点であったがいつしかその役目を終え、ZEROという始まりを予感させる学びの場の象徴空間へとコンバージョンされたのだ。光を帯びた天井形態は誰がどのように決めたかが現地審査で話題になった。かなりの紆余曲折があったようである。空調など設備との取り合いや限られた予算に加え、場所の意味性に基づく明快で大胆な表現の追求などさまざまな議論の末に生まれたカタチであった。低予算を嘆く割には器具取り付けや配光制御、運用に工夫が見られたのも高い評価につながった。このシンプルで大胆なコンバーションの光は最高得点を集め審議でも多くの評価を獲得し最優秀の栄誉に輝いた。

(富田 泰行)

優秀賞:谷口吉郎・吉生 記念金沢建築館

撮影:YAMAGIWA(撮影:大川 孔三)

受賞者:
谷口 吉生(株式会社 谷口建築設計研究所)
岩井 達弥(岩井達弥光景デザイン)
作品関係者:
事業主:
山野 之義(金沢市)
建築設計:

荒川 照陽(株式会社 谷口建築設計研究所)
木藤 美和子(株式会社 谷口建築設計研究所)
設備設計:
松本 尚樹(株式会社 森村設計)
照明設計:
石井 孝宜(岩井達弥光景デザイン)

作品コンセプト:

 金沢出身の著名建築家谷口吉郎氏ゆかりの地に建設された、建築・都市に関するこのミュージアムは、様々な活動を通じ、世界へ建築文化の発信拠点を目指している。
建築の歴史と現在そして未来をつなげる光を、吉郎氏設計の迎賓館別館游心亭をLEDで再現した常設展示室の光、最新の技術で様々な企画展に対応する企画展示室の光、そしてそれらを包み込む長男吉生氏の建築が纏う光の三つの光によって実現した。

講評:

 日本を代表する建築家谷口吉郎氏・谷口吉生氏親子の住居跡に建つ、建築・都市の様々な活動を金沢から世界へ発信する建物である。設計は谷口吉生氏。1階の企画展示室では、主照明に様々な展示に対応出来る多機能スポットライトを採用し、ベース照明と主照明用ライティングトラックを28mm幅のスリットに納めてスッキリした天井面を作り出すことに成功した。2階の常設展示室では、谷口吉郎氏の代表作の一つ、迎賓館赤坂離宮和風別館「游心亭」の広間と茶室で使われていた白熱灯や蛍光灯の照明をLEDで忠実に再現し、谷口吉郎氏の明るさや照明に対する考え方を、来場者が直接体感できる空間となった。今回新たに庭の水盤に映り込む植栽の照明と茶室待合の障子の竹の葉陰の演出を加えることで、金沢でしか味わえない景色を作り出した。ロビー内部からのもれ光を生かした建物外観照明は、この建築館を歴史的街並みの中に穏やかに溶け込ませる役割を果たしている。

(近田 玲子)

優秀賞:ショウナイホテル スイデンテラス

撮影:平井 広行

受賞者:
岩井 達弥(岩井達弥光景デザイン)
作品関係者:
事業主:
YAMAGATA DESIGN 株式会社
建築設計:
坂茂建築設計
構造・設備設計:
Arup
ランドスケープ:
オンサイト計画設計事務所

作品コンセプト:

 本施設は、新産業創出を目指すベンチャー企業等が研究活動を進めるサイエンスパークにおける、地元と来訪者を結ぶ宿泊、飲食、温浴、文化、育児の施設整備計画である。
庄内の美しい原風景である水田に優しく挿入された建築が、やわらかい光を纏い水田に浮かぶ光景を基本イメージに、間接照明の光で建築を表現し、四季折々の水田風景との調和をはかり、やすらぎの空間にふさわしい、人によりそう光環境創出をめざした。

講評:

 水鏡という手法がある。宇治の平等院鳳凰堂がその代表例である。建物が水面に反射して生じる実像と虚像が醸し出す浮遊感のある風景が私たちを不思議な感覚に誘う。

平等院鳳凰堂が意図したのは<西方極楽浄土>だったそうだが、スイデンテラスの場合も、<水田>に見立てられた大きな水面の中央の<アゼミチ>(に見立てられたメインアプローチ)を辿る中で、異空間への到達が準備される。優れた宿には川のせせらぎや潮騒の音あるいは山の眺望など宿泊者を日常生活から離脱させる<設え>が不可欠なのである。

水鏡―反射のデザイン原理は照明デザインでは間接照明という手法で表現される。間接照明による光の反射で照らし出された天井や壁面からのほのかな光は建築空間を浮かび上がらせる。宿泊フロントやレストラン、ライブラリーが配された共用棟では切妻屋根の構造体のシルエットを浮かび上がらせるし、浴室棟では野趣あふれる屋根構造がマニエリスムの館、パラッツォ・デル・テに紛れ込んだかのような錯覚をもたらす。間接照明はコンビニのフラットな照明に慣れた目にはほの暗く感じられるかもしれないが、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を持ち出すまでもなく、ほの暗さは日本文化の伝統に内蔵されていたものではないだろうか。

(渡辺 真理)

優秀賞:The Okura Tokyo

撮影:佐藤振一写真事務所

受賞者:
面出 薫(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
田中 謙太郎(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
岩永 光樹(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
梅原 真次(株式会社 ホテルオークラ東京)
建築・ID・ランドスケープ:
谷口 吉生(谷口建築設計研究所)
インテリアデザイン:
Terry McGinnity(GA design)
建築・ID・ランドスケープ:
田口 晃(大成建設一級建築士事務所)
インテリアデザイン:
若本 俊幸(株式会社 観光企画設計社)

作品コンセプト:

 2019年9月にThe Okura Tokyoとしてリニューアルオープンしたこのプロジェクトでは、「究極の和風」と「現代の快適性」の融合をコンセプトに照明計画がされた。特徴的なオークラロビーは忠実に再現されLED光源によって柔らかな光環境を見事に現代に蘇らせた。車寄せとなるオークラスクエアでは水盤に映り込むプロムナードスクリーンの間接照明と柳の木のライトアップが印象的な景色を浮かび上がらせている。

講評:

 建築的、社会的にも注目度の高い日本を代表する本ホテル改築計画には、建築やインテリアさらにランドスケープそれぞれに高品質なデザインが求められた。おのずとそれらの照明デザインにも求められた高いデザイン性と完成度の期待に応え、目標とする空間の光環境を完成させたことは高い称賛に値するものである。

 伝統の継承と現代技術への移行という理念のもと、「究極の和風」実現のための課題として、豊富な光の階調、柔らかな輪郭の陰影、自然光の移ろいに呼応、やすらぎの演出、自然光に倣った光をかかげ、それらを見事に成し遂げると同時に、「現代の快適性」を適切なLED化と制御ダイアグラムによって実現させた。また、ホテル特有の多様な業種や空間種別に対し、緻密で繊細な対応を行い、最終目標であるお客様本位の高品質なホスピタリティーの光環境が作り上げられたことは、照明デザインに携るプロフェッショナルの手本とすべき業績である。

(岩井 達弥)

入賞:ミライon(長崎県立長崎図書館及び大村市立図書館、大村市歴史資料館)

撮影:中村 絵

受賞者:
牛込 具之(株式会社 佐藤総合計画)
石原 広司(株式会社 佐藤総合計画)
武石 正宣(ICE都市環境照明研究所)
作品関係者:
事業主:
長崎県、大村市
電気設計:
関根 秀幸(株式会社 佐藤総合計画)
建築設計:
佐々木 信明(株式会社 INTERMEDIA)

作品コンセプト:

 長崎県大村湾を臨む敷地に建設された図書館である。 緩やかな湾型平面と段々状に重なる書架閲覧エリアを、一つの大屋根で包込む建築計画を意識しスーパーアンビエント&ヒューマンタスクの光環境を計画した。スーパーアンビエントは大きな間接照明で柔らかな表情の大屋根天井を見せることを考え、ヒューマンタスクは書架と一体化させミニマムかつパーソナルな光とした。

小さな光で長崎の夜景のような光景を創出し、同時に図書館で国内初のZEB-Readyを実現した。

講評:

 一枚の大屋根に包まれた開放的な空間でありながら、「本を読む」のみならず、本との「出会いの居場所」を、大小の空間構成と照明手法によって創出している。日変化で移り変わる自然光を、南面するエクステリアの芝に覆われた地面に反射させたガラスウォールから採り込み、大屋根の間接照明が心地よい、新しいタイプの図書館建築といえよう。閲覧室では、書棚用のカワイイ特注器具の輝度が、文字と触れる楽しみを演出している。

(木下 史青)

入賞:環長崎港夜間景観整備 平和公園地区

撮影:株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ

受賞者:
面出 薫(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
中村 美寿々(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
木村 光(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
長崎市

作品コンセプト:

 国際平和都市・長崎を象徴するこの場所では、「祈りの感情をいざなう」静謐な景色をつくることを目標とした。 整備後の広場では、緑を背景に照らし出された祈念像に向かって、足元に埋め込まれた光の粒が輝く、鎮魂と祈念の感情を導くような祈りの景色が生まれた。

 公園内の平和の泉、原爆落下中心地、近隣の子供たちが通う山里小学校、平和祈念館の重厚感ある建物といった周辺施設も、地区全体で合わせて整備が行われ、静けさや祈りを思わせる佇まいとなっている。

講評:

 平和を祈念する場所である長崎の平和公園及びその周辺施設を一体的に整備する夜間景観整備のプロジェクト。全体的に照度を抑えた落ち着いた空間となっているが、平和公園では、祈りの先へと人々を導く路面の光ファイバー照明、細やかな光で制御された平和記念像、その背景となる樹木、と祈りをいざなう強弱のある光が丁寧に重ねられている。この場所が静かな祈りの空間であることを自然と光で感じることができる点が評価された。

(原田 武敏)

入賞:富山銀行本店

撮影:日建設計

受賞者:
江里口 宗麟(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
上野 大輔(株式会社 日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ)
佐々木 泰和(株式会社 YAMAGIWA 東日本PDC)
作品関係者:
事業主:
中沖 雄(株式会社 富山銀行 取締役頭取)
建築設計:

塩田 哲也(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
河辺 伸浩(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
大西 由希子(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
コンサルティング:

野村 芳和(株式会社 YAMAGIWA 中部支店)
清水 良一(株式会社 YAMAGIWA 金沢営業所)

作品コンセプト:

 『駅前空間に賑わいをもたらし、街の顔となるライトアップ』をコンセプトとした富山銀行新本店のファサード照明である。

 富山の自然や四季、高岡の伝統行事や文化からインスピレーションを受けた演出がプリセットされ、その内容とともに見上げる位置や角度によっても、その表情を豊かに変化させる。

 また、県と市と共に官民一体となって行った、約1年にも渡るデザインプロセスを通して、街の象徴となるライトアップを目指した。

講評:

 高岡駅前の賑わい創出に本ライトアップ計画が担った役割は大きく、かつ景観というデリケートな課題をクリアするため、施主、設計者、メーカーだけでなく行政も参加しOne Teamで取り組んだ好例といえる。このようなメディアファサードは、大型ビジョンや電飾サインとの区分けがよく論議されるが、本件は建築的特徴とよく調和し、環境装置としての位置付けをスケジュールやコンテンツの吟味によって貫いていることが大きく評価できる。

(岩井 達弥)

審査員特別賞:京都経済センター

撮影:株式会社エスエス大阪 左海 一郎

受賞者:
入江 俊介(大成建設 株式会社)
西崎 暢仁(大成建設 株式会社)
坂下 泰士(大成建設 株式会社)
作品関係者:
事業主:
野瀬 兼治郎(京都経済センタービル管理組合)
建築設計 :

内藤 多加志(大成建設 株式会社)
高岩 遊(大成建設 株式会社)
設備設計 :
根本 昌徳(大成建設 株式会社)

作品コンセプト:

京都の中心地である四条室町にふさわしい京都創生のシンボルを創出した。夏の訪れを告げる祇園祭の山鉾が建ち並び風情ある街へと変容するこの地に、柔らかでありながらも存在感を魅きたたせる「行灯」のような建築を目指した。京町屋の店先から漏れる灯りの温かさを創出する為、建築と設備を融合し具現化した。また色温度を山鉾の提灯と合わせることで、あたかも昔から建っていたような建築を目指した。

講評:

京都中心部の街角に建つこの施設の照明は、日常に限らず祇園祭に相応しい街並みを創出する。二つの通りに面した回遊バルコニー上部の軒を想起させる水平に配した木肌をほんのりと街中に浮かび上がらせ、祭期間中は四条通面の照明が行灯のように街を照らす。かつての連なる軒先が形成した整然とした水平基軸の街並みを、混沌とした現代にささやかではあれ確かに蘇らせており、京都の町や照明デザインの行方を照らすかのようである。

(原 直也)

2019年 照明デザイン賞 講評

総評

 応募総数は31作品。7名の審査員により一次、二次審査を経て11作品に絞り込み、応募者立会いの現地審査を経て最終審査委員会を行い、最優秀賞1作品、優秀賞3作品、入賞3作品、審査員特別賞1作品と、照明デザイン賞としてのレベルの高さを示す計8作品を決定した。受賞者は建築関係者、大学関係者、照明関係者と多岐にわたる。照明デザイン賞審査委員会では、より多くの人が気軽に応募できるよう、2020年に向けて要項の簡略化を検討中である。

(審査員長 近田 玲子)

最優秀賞:水木しげるロード

撮影:鈴木 文人

受賞者:
長町 志穂 (株式会社 LEM空間工房)
熊取谷 悠里 (株式会社 LEM空間工房)
作品関係者:
事業主:
中村 勝治(境港市長)
灘 英樹(境港市 建設部 次長 兼 水木しげるロードリニューアル推進課 課長)

設計関係者

土木設計:
栗原 裕(有限会社 ユー・プラネット)
システム設計:
伊藤 貴史(ウシオライティング 株式会社)
VR監修:
福田 知弘(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

作品コンセプト:

 水木しげるロードは、公共道路空間の新たな魅力化と昼夜にわたる集客を期待するまちづくりとして、歩道拡幅整備と照明デザインによって実現したものである。
当該道路は1993年供用開始され、芸術的な妖怪ブロンズ彫刻のある町として人気を博してきたが、近年観光客も減り店舗は16時には閉店するような状況であった。そこで道路環境の改善とともに「日没後まで居たくなるまち」をめざし、照明効果によって「妖怪の気配を感じられる光のナイトミュージアム」としてリニューアルすることを照明デザインとして提案し採択された。約800mの歩道は、177体のブロンズ彫刻が再配置され「妖怪影絵」「音と光の演出」をはじめとする異なる照明手法と効果を公共照明としてとりいれた「光をめぐるまち」である。すべての照明は、全域でトータルに細かくプログラム制御し、この道に相応しいエンターテイメント性と深夜の省エネルギー、安全安心を同時に実現している。

講評:

 照明デザインの新たな可能性を切り開いたプロジェクトとして、際立った評価で最優秀賞に選ばれた。
JR境港駅から約800mにわたり、地元出身の漫画家水木しげる氏の創出した177体の妖怪ブロンズ像が並ぶ「水木しげるロード」が、25年目のリニューアルで、光の妖怪が出現する街路へと生まれ変わった。ブロンズ像への照明に加え、雰囲気を変えるカラーライティング、ゴボプロジェクターで路面に投影される妖怪たちの姿、そしてその気配を感じさせる街路灯や店先照明の変化や動きなどの緻密な照明制御が、効果的な音響と相まって、あたかも妖怪が住んでいるかのような街路を創り出した。
通常このような計画は、短期イベントでも道路照明や景観照明の規制や基準、あるいは様々な意見に阻まれることが多い。しかし、これら多くの課題を照明デザイナーと熱意ある行政担当者や住民が一致協力して解決し、常設の施設として成立させた本件は、照明デザインの歴史に足跡を残す意義のあるプロジェクトといえるだろう。

(岩井 達弥)

優秀賞:三越日本橋本店本館

撮影:鈴木 文人

受賞者:
山本 幹根 (株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
岩田 昌大 (株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
株式会社 三越伊勢丹
建築設計:
隈研吾建築都市設計事務所
施工:
株式会社 三越伊勢丹プロパティ・デザイン

作品コンセプト:

 国の重要文化財に指定された日本橋三越本店、本館1階の改修計画である。
歴史的な建物を保存しながら、「白く輝く森」という建築デザインのコンセプトのもと照明計画を行った。
アール・デコ様式を用いた現代的な樹冠はフロア全体に展開され、美しいグラデーションの光で空間に明るさ感を与え、おもてなしの場を演出している。各入口には、お出迎えの為の特別な天井が設けられ、光に包まれる象徴的な場となっている。

講評:

 重要文化財に指定された百貨店の改装計画である。コンセプトは極めて明快。柱上部にアルミの葉状樹冠を取り付け、一枚一枚の葉に間接照明を仕込んで「白く輝く森」を創出する―ということだ。実現にあたってデザイナーは、設計シミュレーションや原寸モックアップで検証を重ね、光源選定、反射面角度、照明位置、器具交換の可否の検証など、ミリ単位でディテールの作り込みを行った。結果として、全く独創的で未来的な光空間を現出させ、大正初期、竣工当時の市民に感じさせたであろう百貨店本来の「晴れがましさ」までも現代に再現することに成功した。光のガイドラインによるテナント空間の光制御や、防災設備等とのデザイン上の折り合いのつけ方も含め、照明デザイナーのプロフェッショナルな関与は大いに評価されるべきで、「白く輝く森」に江戸以来の伝統と未来を二つながらに感じさせ、ある種の気品をもたらせたのも、こうした繊細な職人芸の賜物だろう。

(植野 糾)

優秀賞:慶應義塾大学病院1号館(新病院棟)

撮影:日暮 雄一

受賞者:
戸恒 浩人 (有限会社 シリウスライティングオフィス)
斎藤 俊一郎 (株式会社 竹中工務店)
作品関係者:
事業主:
慶應義塾
建築設計:
江波戸 宏(株式会社 竹中工務店)
近藤 朋也(株式会社 竹中工務店)

作品コンセプト:

 東京・信濃町にある慶應義塾大学病院の新病院棟。「Keio Forest」をテーマに、随所に杜のモチーフをちりばめた柔らかな光環境をデザインしている。主動線であるホスピタルモールでは、遠くまで伸びる枝のように天井間接照明を計画。そこに接続する待合・ラウンジ空間においては、天井に複数の葉形のダウンライトを軽やかに舞わせ、滞在する人々の心を優しく包む。2階エントランスの光のパーゴラや、木立の重なりが、杜の中を散歩しているような心癒される光環境を実現している。

講評:

 大学病院に建設された新病院棟の照明デザインで、建築設計と照明デザインが一体となって非常に居心地の良い空間が作り出されている。木立・枝・葉・杜のコンセプトは、わかりやすく幅広い訴求力を持つ一方で具象的過ぎる印象を与えかねないが、実際に出来上がった空間では、それらのデザインが前面に出すぎて目立ちすぎるようなことはなく、照明デザインは空間の質・居心地の良さ・ひそやかな視覚的楽しさをもたらすことにひたすら寄与している。病院建築の照明ということもあり、比較的大人しいデザインではあるが、一見控えめながらも細部までこだわりを持って練られている。葉形ダウンライトも単純な仕組みでありながら、視覚的効果は綿密に計算されている。全体としてバランス感覚が素晴らしく照明デザイン賞に相応しい作品となっている。病院建築における今後の照明デザインの一つの方向性を示すものとしても価値ある作品であると評価されよう。

(吉澤 望)

優秀賞:京都 神楽岡 蓮月荘

撮影:堀内 広治

受賞者:
竹内 跡 (株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
熱田 友加里 (コイズミ照明 株式会社 LCR)
中村 公洋 (株式会社 日建設計 ソリューショングループ)
作品関係者:
事業主:
中山 哲也(トラスコ中山 株式会社 代表取締役社長)
設備設計:
小林 護(株式会社 日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ)
照明設計:
松本 慎二郎(コイズミ照明 株式会社 特機商品部 製作室)

作品コンセプト:

 京都市左京区のゲストハウス兼保養施設。外観は存在感を保ちながら住宅街の静けさに溶け込み、内部は大文字山を望む東側の開口部が自然を最大限に取り込む。素材は左官や焼杉板を使用し、日本建築らしさや職人の手仕事を伝える。照明は光によって「空間を広げる」をコンセプトに計画。光の「面」をつくることで、空間に奥行き感や多面性を持たせた。和紙をアクリルに封入する技術で導光板照明と行燈を開発し、伝統と最新技術の融合を実現した。

講評:

 この建物は、京都・哲学の道にほど近い静かな住宅地に建てられた客室5室の宿泊保養施設である。目を引くのは、凹凸のある石壁、焼杉板や左官仕上げの壁など、建物各所を形作っている素材へのこだわりと、それらを生かした光である。建物全体を通しての照明デザインの基本は「光の面を作る」こと、光によって空間に奥行き感や多面性を持たせることであった。大文字山を望むダイニング・ラウンジや客室、2つの大浴場では間接照明で天井を浮かせ、4つの庭では素材と光の絶妙なバランス、京都らしい伝統と格式を見ることが出来た。眩しさがなく辺りを柔らかく照らす光が訪れる人を迎える。随所に見られる光を取り込んだアートワークの中でも、手作業で透明アクリルの中に白い和紙が蓮の葉のように浮かぶ形を作り上げた行燈が印象的であった。建築設計者が望む空間が、光によって余すところなく表現されている。

(近田 玲子)

入賞:東京大学総合図書館

受賞者:
川添 善行 (東京大学 生産技術研究所)
中澤 公彦 (清水建設 株式会社 設計本部 設備設計部4部)
赤羽 元英 (パナソニック 株式会社 エコソリューションズ社)
作品関係者:
事業主:
国立大学法人 東京大学
設計・監修:
東京大学キャンパス計画室(野城 智也)・同施設部
建築設計:
稲場 万鎖夫(清水建設株式会社 設計本部 教育・文化施設設計部)

作品コンセプト:

 関東大震災の記憶を継承する噴水を、地下空間であるライブラリープラザへ光を導入するトップライトに生まれ変わらせた。周辺の外構計画では関東大震災で焼失した旧図書館のレンガ基礎に照明を組み合わせ、キャンパスの憩いの場所としている。地下空間のライブラリープラザは、噴水トップライトからの自然光により、地下でありながら四季を感じられる空間が完成した。噴水トップライトからの自然光を補うかたちで、木格子の天井全体が照明となって、器具・グレアを感じさせない人にやさしいデザインとした。

講評:

 このプロジェクトでは光のデザインが建築設計の核心的役割を果たしていることが評価された。関東大震災で焼失した旧図書館の噴水をトップライトとして蘇らせる。広場に人を集める為に、周囲の建築からの漏れ光や遺構ベンチの間接照明だけで外構をまとめる。地下のライブラリープラザも、天井一面を覆う木格子ルーバからの光で、大きな照明器具の中に身を委ねるような気配を漂わせる。
設計者の強いデザイン意図が結実している。

(面出 薫)

入賞:香月メディカルビル

撮影:黒住 直臣

受賞者:
林 総一郎 (株式会社 三菱地所設計)
作品関係者:
事業主:
香月 孝史(医療法人社団秋月会香月産婦人科)
建築設計:
杉本 宏之(株式会社 三菱地所設計)
荒井 拓州(株式会社 三菱地所設計)
電気設計:
伊藤 匡貴(株式会社 三菱地所設計)

作品コンセプト:

 広島市内の築17年のオフィスビルをコンバージョンし、出産・子育てを行う女性とその家族を総合的にサポートする都市型複合医療施設に再生した。祝祭の場に相応しい華やかで輝くようなReデザインを施し上質で洗練された空間へと昇華させている。三層に分節された各々の外装にライティング演出を行って建物に奥行き感を生み出し、母親が我が子を包み込むように全体を優しい光のベールで包み込んだ。地元広島カープが勝利した夜には赤く輝き地域文化を体現する。

講評:

 築17年の事務所ビルを産婦人科、乳幼児医療保育施設に用途変更した建物。外観意匠で魅せる候補物件が複数あった中で、ガラス、金属仕様外観への照明企画が地域景観に貢献した点に加え、医療施設としての安心感、清潔感のあるアイボリー調内装に相応しい間接光の取り入れ工夫、視線方向に配慮した防眩器具による視覚に優しい照明計画、屋上庭園の開放感に満ちたヒーリング効果のある利用者優位の照明デザインが総合的に評価された。

(水馬 弘策)

入賞:熊本県医師会館

撮影:平井 広行

受賞者:
今村 雅樹 (日本大学/今村雅樹アーキテクツ)
石黒 竜夫 (伊藤喜三郎建築研究所)
井谷 博行 (山田照明 株式会社)
作品関係者:
事業主:
公益社団法人 熊本県医師会
建築設計:
伊藤喜三郎建築研究所・今村雅樹アーキテクツ設計JV
構造設計:
TIS & Partners
照明設計:
設楽 義行(山田照明 株式会社)
中村 大輔(山田照明 株式会社)

作品コンセプト:

 この建築は医師会の新しい理念「開かれた医師会」として、新社会の拠点となるべく設計された。
熊本城に面するお堀遊歩道側と反対の電車通りに面する両通りを、1階「パサージュ」で結びシンボル的空間とし、2階「300人ホール」へと繋がるパブリック空間を計画している。熊本大震災復興を願って現場制作した天井画「雲雀」や旧会館の「めがね椅子(坂倉準三デザイン)」43脚を再生し、多くの人に利用されるよう「光環境によるうつろい」をエレメントとして設計された。

講評:

 北側に復興中の熊本城、南側を電車通りに挟まれた最高のロケーションに建っている。光によるウェイファインデングの効果でスキップフロアの構成が分かりやすい。ロビーはガラス張りで透明感に溢れ、ホールの光幕照明も美しい。建築外観は穴の空いたパンチングパネルで構成され、夜間に暗くなるオフィスビルエリアに建物から漏れる光で優しく通りが照らされている。歴史都市熊本に新しい夜間景観を寄与したことが高く評価された。

(松下 美紀)

審査員特別賞:山のセカンドハウス

撮影:井上 玄

受賞者:
久保 隆文 (株式会社Mantle)
井上 玄 (株式会社 GEN INOUE)
宇谷 淳 (株式会社 GEN INOUE)
作品関係者:
施工 :
春田 勝盛(テクノアート)

作品コンセプト:

 山の中に立てられたセカンドハウス。7つの短冊状に分けられた空間ではベッドやソファなどの固定的な家具は置かず、素材やプロポーションに変化をもたせ空間の質に差異を演出している。
使う人がアクティビティや気分によって移動し、居場所を選ぶように、空間との関わり合いを誘発する事を目的としている。大きな窓が特徴的な空間において、屋外が真っ暗になることを効果的に利用し、窓に映りこむ光をデザインした。
多様に映りこむ光環境を楽しめるような自由な空間となっている。

講評:

 セカンドハウスと言うより家族のための自己啓発道場のような環境だった。人家の少ない村の斜面地を利用して7つに分節されたウエハースのような建築空間だ。家族がそれぞれに勝手な時間を楽しむために作られたそうだ。
光の設計もその意図を反映して7種類の異なる性質を持たせている。明るい部屋と暗い部屋。上からの光や下からの光。陰翳の濃い空間と均一に照らされた空間。まるで光の実験道場のようにも思えて楽しそうだった。

(面出 薫)

2018年 照明デザイン賞 講評

総評

 2018年度の応募総数は58作品であった。第1回審査会で現地審査対象を10作品に絞り込み、続く現地審査では、1作品につき2名の審査員がそれぞれ現地に赴いて作品を検証すると同時に、設計者から建築や照明デザインの説明を受けた。第2回審査会では、現地審査に行った審査員からの報告を踏まえて、7名の審査員が投票を行った。議論の結果、最優秀賞は該当なし、優秀賞4作品、入賞3作品、審査員特別賞1作品を選出した。

(審査員長 近田 玲子)

優秀賞:星のや東京

撮影:ナカサアンドパートナーズ

受賞者:
林 総一郎 (株式会社 三菱地所設計)
東  利恵 (有限会社 東環境建築研究所)
武石 正宣 (有限会社 ICE 都市環境照明研究所)
作品関係者:
事業主:
三菱地所 株式会社
運営者:
星野リゾート
建築設計:
清水 聡 (株式会社 三菱地所設計)
石田 雅大(株式会社 三菱地所設計)
宿利 隆 (株式会社 三菱地所設計)
電気設計:
岩井 厚 (株式会社 三菱地所設計)

作品コンセプト:

 星のや東京は日本旅館である。江戸小紋のスクリーンで覆い、重箱のようなデザインとした。玄関から客室までを畳敷きとし、各階にお茶の間ラウンジを設え、日本のくつろぎを表現した。
照明計画では「塔の日本旅館」にあるべき光環境として、見え隠れする奥ゆかしさ、徹底した眩しさの排除を念頭に計画した。
意図的に分節し明暗を生む間接照明、丁寧に遮光して間接照明化された意匠器具など実験的な手法も織り交ぜ、日本的な静謐さをたたえる空間となった。

講評:

 超高層ビルが立ち並ぶ東京大手町に、ホテルではなく「日本旅館」を作ることをテーマとした極めつけの星のやが誕生した。ホテルと旅館の違いは明確だ。室内で靴を脱がせるのが旅館。お迎え空間から広大な畳が待っていた。
照明デザイン上のコンセプトは日本特有の「間」や「陰翳」の美しさを際立たせることだと説明された。なるほど廊下の障子でさえ均一な明るさでなく美しいグラデーションを見せる。客室の欄間風な間接照明にいたっても、わざと光を繋げずに間隔をあけて陰翳を演出している。しかしこれは一見して球切れに見えはしないかと私は心配した。
「光を間引く」という考えで光の総量をおさえることに腐心したと言う。そのアイデアはアルミダイキャストで覆われた個性的な外観の照明にも表れている。特徴的な光の水平ラインを敢えて分断することで強い陰影の意識を表現している。
随所に挑戦的な照明デザインが見られ意欲的な思いの強さが伝わる仕事である。

(面出 薫)

優秀賞:近畿大学ACADEMIC THEATER

撮影:金子俊男

受賞者:
戸恒 浩人 (有限会社 シリウスライティングオフィス)
畠山 文聡 (株式会社 NTTファシリティーズ)
作品関係者:
照明デザイン:
小林 周平(有限会社 シリウスライティングオフィス)
遠矢 亜美(有限会社 シリウスライティングオフィス)
建築設計:
岡 俊徳(株式会社 NTTファシリティーズ)
伊藤 裕也(株式会社 NTTファシリティーズ)
設備設計:
竹林 雄司(株式会社 NTTファシリティーズ)

作品コンセプト:

 知的好奇心を揺り動かす「知の実験劇場」をコンセプトとした、近畿大学東大阪キャンパスアカデミックシアターの計画。各棟が独自の外観と内部空間を有する5つの建築群によって構成されており、それぞれの空間デザインのコンセプトを光で浮かび上がらせている。なかでも、四隅に建つ4棟をつなぐ中央の図書空間は都市のような複雑な様相を特徴としているため、光によって散策したくなるような期待感に満ちた雰囲気を創出した。

講評:

 図書館を中心として学生の学びや交流の場を作り出すことを狙った斬新な建物であり、そのコンセプトに沿った新たな照明デザインのあり方を示した作品である。特に平面計画に則った内部空間の天井の三日月型の建築照明は非常に緻密にデザインされており、一筆書きで光をペイントしたかのような美しい効果をもたらしている。オーガンジーの布を用いた天井照明は布に対して法線方向から見ると最も効果的で、場所によっては風にそよいで雲が漂うような印象を与えていた。木質ファサードを照らしあげた外観照明は松明の連なりのような見えとなっており、柔らかく斬新なイメージを建物全体にもたらすことに成功している。大学キャンパス内の照明計画としてこれまでにない大胆な光の効果をもたらしている点が高く評価された。

(吉澤 望)

優秀賞:GINZA SIX

撮影:金子俊男

受賞者:
村岡 桃子 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
木村 光 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
本多 由実 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
作品関係者:
建築主:
銀座六丁目10地区市街地再開発組合
設計プロジェクトマネージャー:
森ビル/アール・アイ・エー
基本計画・基本設計:
谷口建築設計研究所
実施設計・監理:
銀座六丁目地区市街地再開発計画設計共同体
(谷口建築設計研究所, KAJIMA DESIGN)
ランドスケープ:
プレイスメディア

作品コンセプト:

 115mの街区を貫くひさしの層に映り込む街のアクティビティと、そこに組み込まれた抑制のきいた光のライン。 低層商業階ファサードの“のれん”には照明ガイドラインを示し、各ブランドにはそのルールの中で個性を発揮してもらう計画とした。大規模開発における建築ファサード照明計画として、周囲との調和や影響について仔細な検討を重ねた。屋上庭園では、周辺夜景を楽しめるように低照度・低位置に照明を配置した。

講評:

 銀座の新たな名所としてオープンしたGINZA SIXは、銀座通りファサードでブランドを主張するアクティブな光と、都市の光の喧騒を映すパッシブな光を積層することで、現代社会の縮図のような、これまでにない新しい銀座の光の顔をつくりだしている。
さらに建築に覆われたあずま通りでは明るさの創出、大きな建築の裏となった三原通り側のファサードには色彩の光による賑わい、そして屋上庭園には陰影のあるやすらぎの光と、適光適所に都市が求める光を巧みにデザインしたことが高く評価された。

(岩井 達弥)

優秀賞:西南学院大学図書館

撮影:Kozo Okawa

受賞者:
松下 美紀 (株式会社 松下美紀照明設計事務所)
高山 直樹 (株式会社 松下美紀照明設計事務所)
作品関係者:
事業主:
G.W.バークレー(学校法人 西南学院大学)
建築設計:
飛永 直樹(株式会社 佐藤総合計画 九州事務所)
篠原 正樹(株式会社 佐藤総合計画 九州事務所)

作品コンセプト:

 福岡市の文教拠点に位置する西南学院大学図書館は「西南の知の樹」として建築の中心に知識の幹の「ブックツリー」があり、周囲は成長する枝葉としての「ラーニングリーフ」という空間が幹を支える樹木のような構成になっている。建築の意図を表現するために 照明コンセプトを「知をひらく光」とし、建築と一体化した光空間を創出した。外観はトレサリー(レンガ透かし積み)から内部の光が外へ漏れることで、まるでレースのような柔らかな表情を生みだしている。

講評:

 福岡西新地区の文教拠点にある大学の新しいシンボルとも言える図書館である。隣接するヴォーリス設計の大学博物館と同色のレンガ・トレサリー(透かし窓)の外壁は、昼は自然光を柔らかく取り込む照度制御の役割を果たし、夜は内部の光を効果的に見せてヴェールを纏った貴婦人のような夜景観の創出に成功している。照明デザインの基本は、最小の光で最大の効果を生み出す「ラーニングフリー」としている。書架スペースでは、本棚の上部に取り付けた上下配光の特注器具で、ボールト天井へのアッパーライトと上から下まで十分に明るく照らす書架照明を実現させた。加えて、人感センサーを細かく取り付け、省エネにも配慮している。建物中央の6階吹き抜け空間「ブックツリー」では、吹き抜け周りの書架用ウォールウォッシャー以外の照明器具を設置せずに、吹き抜け中央にある階段の照度を確保するなど、緻密な計算に基づいた光のデザインが評価された。

(近田玲子)

入賞:能作新社屋

撮影:金子俊男

受賞者:
戸恒 浩人 (有限会社 シリウスライティングオフィス)
遠矢 亜美 (有限会社 シリウスライティングオフィス)
作品関係者:
施主:
株式会社 能作
建築設計:
株式会社アーキヴィジョン広谷スタジオ
家具設計:
Koizumi Studio
プロジェクトプロデュース:
株式会社 t.c.k.w
サインデザイン:
水野図案室 合同会社

作品コンセプト:

 富山県高岡市にある、鋳物の製造・販売を行う能作の工場とショールームを兼ねた新社屋。ショップ、カフェがあるホールでは、緻密なCGシミュレーションにより決められたアップライト手法によってダイナミックに傾斜したルーバー天井を広く美しく照らし出している。
また、職人が鋳物を作る過程を来場者が見学できる仕上場では、職人の作業のための光と、来場者のための演出的な光を両立させたデザインとしている。

講評:

 話題となった錫製品姿をメタファーとする直線光源で構成された工場照明は、LED光源による新しい機能照明可能性を示唆していると評価した。また、ショップ・カフェエリアの照明に於いては、壁面一部に設えられた金属素材意匠壁に対して、金属という光沢、鏡面性を伴う素材を冷静に解析した上で直接的な投光を排除し、周囲インテリア輝度をほのかに映し出すという意匠壁演出手法を選んだところに、照明設計者の緻密さを感じる作品であった。

(水馬 弘策)

入賞:大光電機 株式会社 技術研究所

撮影:稲住写真工房

受賞者:
安東 克幸様 (大光電機 株式会社)
川中 祐介様 (大光電機 株式会社)
東井 嘉信様 (株式会社 大林組)
作品関係者:
事業主:
大光電機 株式会社
建築設計:
西森 史裕(株式会社 大林組)
設備設計:
松村 圭悟(株式会社 大林組)

作品コンセプト:

 本施設は、照明器具の製品開発、研究を担う施設として建設。「建築」「自然光」「照明」の一体化を目指し、 すべては「光」を最優先に考えた設計を行っている。特にエントランスホールの巨大な壁面に設置した「ヒカリタイル」は 来訪者を迎える「DAIKOのあかり」を象徴し、廊下や執務スペースで使用しているライン照明は、1つのモジュールで 10種類の器具に展開し、各エリアの用途に応じた照明手法と意匠性の統一を図っている。

講評:

 分散していた研究機能をひとつにまとめ、最新試験設備を導入し品質管理向上を目的とした照明メーカーの技術研究所である。エントランスホールでは3396個の光タイルが様々なシーンを演出し、お客様を迎える光として効果を高めている。執務空間は計画された配光設計により心地良くストレスを全く感じない。社員がタスクライトを点けると、そのゾーンの空調や換気が稼働する連動制御のオフィス照明を導入するなど、可能性への取り組みが高く評価された。

(松下美紀)

入賞:静岡県富士山世界遺産センター

撮影:金子俊男

受賞者:
窪田 麻里 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
矢野 基世 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
本多 由実 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
静岡県
建築設計:
坂茂建築設計
構造・設備:
Arup
ランドスケープ:
オンサイト計画設計事務所
展示:
丹青社
サイン:
日本デザインセンター

作品コンセプト:

 ユネスコ世界文化遺産に登録された富士山の、文化発信・研究拠点となる施設である。木格子に覆われた逆さ富士型の展示棟を照らし上げ、山頂に光が積もる富士山型が水盤に映り込む。刻々と表情を変える富士山のように季節ごとの演出を設定している。富士山への眺望や近隣住宅に配慮して、低い位置の外構照明のみとした。屋内では木格子の壁面を照らして素材感立体感を引き立たせるとともにアトリウムの明るさ感を担保している。

講評:

 水盤に映り込んだ木格子の「逆さ富士」は、隣の浅間神社の赤い大鳥居と奥に聳える「富士山」も取り込んで、ありふれたロードサイドを一変させた。照明の力で夜の景観はさらに魅力的だ。ガラスを挟んで屋内外の木格子のライトアップを連続させるという、極めてシンプルで骨太なコンセプト、そしてその実現のための水中照明の実験や床面LEDのグレア対策など、丁寧なディテールや誠実な技術力に、高い評価が与えられた。

(植野糾)

審査員特別賞:越後妻有文化ホール・十日町市中央公民館~段十ろう~

撮影:村上美都

受賞者:
鈴木 教久 (株式会社 梓設計)
加藤 洋平 (株式会社 梓設計)
髙橋 匡太 (株式会社 髙橋匡太)
作品関係者:
事業主:
十日町市長 関口 芳史
電気設計:
齋藤 禎二(株式会社 梓設計・電気システム部)
建築設計:
桾澤 忍(株式会社 塚田設計事務所)
アートコーディネート:
飛田洋二(株式会社 アートフロントギャラリー)
アート照明設計支援:
井出 英典(カラーキネティクス・ジャパン 株式会社)
アート照明プログラム:
川口 怜子(株式会社 髙橋匡太)

作品コンセプト:

 ホールと公民館の複合施設である。最高の舞台芸術を鑑賞できると共に、市民の多様な文化活動が行える。ここでは、日本人の伝統的な世界観の一つである「ハレとケ」を大切にした空間としたかった。そのため、ハレとケの空間を光で際立たせている。祝祭性のあるホールの内壁は木仕上げ、ホール外側の壁は本実型枠仕上げとし、地元産の木を反転した仕上げの関係でハレとケを表現している。また、イベント時には、雁木ギャラリーの光の演出「光り織」により、夕刻になれば建物の表情は、十日町着物を纏うよう一変する。

講評:

 里山の暮らしに現代アートを定着させた「大地の芸術祭」で知られる十日町市の文化拠点ホールである。大通りから奥に入り込んだ敷地を顕在化させるため作られた100mを超える雁木ギャラリーの天井に、十日町市の伝統織物、明石ちぢみや十日町友禅の縞模様と色をモチーフにした「光り織」が組み込まれた。月ごとに変わる光の色は市民生活に生気を吹き込む。白一色の長い冬の間も人々の活動を刺激する景観照明として評価された。

(近田 玲子)

2017年 照明デザイン賞 講評

総評

 審査員は7名。1次で63件の応募作品を審査、2次で1次で選ばれた9作品を現地審査、3次で最優秀賞1件、優秀賞2件、入賞3件、審査員特別賞1件を選定した。前回を大幅に上回る様々なジャンルからの応募作品は、これまでの受賞作品のデザイン性の高さ、審査の公平性が評価された結果と受け止めたい。今回、ミニマムな光の構成で広場照明をデザインした最優秀賞の「南池袋公園」は、暗さも居心地の良さの一部であることを示した。

(審査員長 近田 玲子)

最優秀賞:南池袋公園

撮影:ナカサアンドパートナーズ

受賞者:
平賀 達也 (株式会社ランドスケープ・プラス)
富田 泰行 (株式会社トミタ・ライティングデザイン・オフィス)
大岡 直美 (株式会社トミタ・ライティングデザイン・オフィス)
作品関係者:
事業主:
豊島区都市整備部
公園設計:
小林 亮太(株式会社ランドスケーププラス チーフデザイナー)
建築設計:
久間 常生(株式会社久間建築設計事務所 代表)

作品コンセプト:

 当施設は池袋駅に程近い繁華街に隣接する新しい運営形態を取り入れた都市公園である。豊島区は日本一の高密都市でありながら消滅可能性都市に指定された経緯があり、その逆境をバネに文化政策が打ち出され当公園の整備事業もその一環に位置づけられた。従来の公園整備とは異なり、都市経営の観点から民間活力を導入し、カフェの運営と維持管理の組織づくりなど官民一体となった体制をとっていることが大きな特徴である。
「都市のリビング」を公園計画のコンセプトに据え、昼夜を分かたず市民が訪れ楽しく過ごすことができる空間をつくりだすことが求められた。
夕暮れとともにゆったりとしたくつろぎの時間が始まる。既存樹を利用したテラスエリアのさくらんぼ照明、ステップフロアと手摺の間接光が人々を誘い、カフェの窓明りが公園の行灯的な役割を果たす。キッズテラスのリボンスライダーは少しの光で浮かび上がり公園のアイストップにもなっている。中央に広がる芝生広場に照明器具はない。照度基準のみに頼ることなく暗さの中にある安心や心地よさを引き出すことに注力した公共空間となり、サードプレイスとして夕刻以降の都市活用に一役買っている。

講評:

 光のデザインの力で公園の夜がここまで価値を高めることができる。そのことを万人に知らしめる為の優れた実例だ。審査員の満票でこのプロジェクトが最優秀賞に選ばれた。
この公園がある豊島区は日本一の高密都市でありながら、2014年に東京23区で唯一の消滅可能性都市に指定されたそうだ。しかしその厳しい評価をバネにして、官民が一体となり「人が主役の街づくり」を掲げてこの計画が進められた。このような仕事は照明デザイナーの努力だけでは成就しない。このプロジェクトでは、志の高いランドスケープデザイナーと熱意あふれる行政担当者に恵まれ、通常では均整度のみが要求される公園照明の常識を大きく革新した。照明のない中央の芝生広場、既存樹を活かしたさくらんぼライト、高品質な手摺照明、キッズテラスの濃淡のある景色など。随所に「都市のリビング」をコンセプトにしたメリハリのある光環境が出現した。
池袋の喧騒の向こうにゆったりと夜を寛ぐ公園がある。それだけで画期的な成果である。

(面出 薫)

優秀賞:ニフコYRP 風のプロムナード棟

撮影:小川 重雄

受賞者:
越野 達也 (株式会社竹中工務店)
高橋 一哉 (株式会社竹中工務店)
中島 一秋 (株式会社ライティングシステム)
作品関係者:
事業主:
小泉 貴志(株式会社ニフコ)
設備設計:
三島 広之(株式会社竹中工務店)

作品コンセプト:

 実験施設のエントランス棟。ウェーブする大屋根が特徴で、場所や機能に適した天井高を確保しながら、建物長手方向に流れる海からの卓越風を可視化したデザインである。コンクリート壁に沿ったライン状の光は建築の軸線を浮かび上がらせ、有機的なフォルムの大屋根を柔らかく照射する。建築と一体的に水盤を配し、照明効果が床面にも拡張するよう試みた。「建築全体が一つの照明器具」となり、地域に新たな光の風景を創出している。

講評:

 長さ75mの鉄筋コンクリート壁の上に、Tの字型に鉄骨屋根スラブが載るだけの、単純なヤジロベイ構造の建築である。照明計画も極めてシンプルで、正面壁を床からライトアップし、室内側では壁面上部に仕込んだライン照明で天井面を照らし上げて、水平線を強調する。場所に合わせて天井高を変化させ(2.1m~3.5m)柔らかい曲面大屋根とし、海からの卓越風の流れを緩やかに表現する。機能は逆に複合的で、二棟の既設建屋を動線としてつなぎ、新実験棟のエントランスとラウンジを提供し、結果として本社全体の象徴的な顔づくりに成功している。中庭のボラード照明は不要であり、ディテールに修正の余地がある等の意見も出されたが、計画の初期から建築も構造も設備も、光も風も一体的に考え続けた若手設計者の熱意と、コンセプトをモノへと結実する力量に対し、今後の期待も込め高い評価が与えられた。

(植野 糾)

優秀賞:NIFREL(ニフレル)

撮影:小川 重雄

受賞者:
北村 仁司 (株式会社竹中工務店)
会津 寿美子 (株式会社トータルメディア開発研究所)
三島 立起 (株式会社ファースト・デザイン・システム)
作品関係者:
事業主:
三輪 年(株式会社海遊館 代表取締役社長)
展示設計:
紀伊 健(株式会社トータルメディア開発研究所)
展示設計:
立花 弘章(株式会社ファイズデザイン)
照明設計:
國分 頼明(大光電機株式会社 TACT大阪デザイン課)

作品コンセプト:

 日本最大級の水族館「海遊館」を運営する株式会社海遊館が、大阪万博跡地に2015年11月開業した全く新しいコンセプトの展示施設である。従来の水族館とは大きく異なり、美術館、博物館、動物園、水族館などが融合した体感型ミュージアムとなっている。NIFREL(ニフレル)という名称は、「~に触れる」に由来している。この施設を訪れる人々が生き物の不思議や神秘を体感し、「感性にふれる」展示空間を目指した。

講評:

 本施設は従来の水族館とは大きく異なる、美術館、博物館、動物園そして水族館が融合した体験型のミュージアムプロジェクトである。「~に触れる」に由来した名前の通り、ここでの体験が「感性に触れる」ことを目指して造られている。プロローグは最初の展示室で色の変化に触れる空間、次は真っ暗な中に面発光した水槽が浮かび、天井はまるで星空のような姿に触れる空間。テラリウム栽培や飼育が可能なライティングとなっている水辺に触れる空間。水槽照明は配光制御された専用設計の器具で色温度と照度により生息水環境が表現されている。生き物に必要な自然光はトップライトや窓から取り入れられ、加えて人口光で時間の流れを作るプログラム制御を可能にしている。このように変化する空間構成はまるで一冊の図鑑を見るようである。照明デザインにおいては、暗さと明るさのコントラストやインタラクティブな照明を体験できることが評価されての受賞となった。

(松下 美紀)

入賞:軽井沢の大屋根

受賞者:
戸恒 浩人 (有限会社シリウスライティングオフィス)
遠矢 亜美 (有限会社シリウスライティングオフィス)
作品関係者:
事業主:
浅井 正士(株式会社コアシグナル)
建築設計:
広谷 純弘(株式会社アーキヴィジョン広谷スタジオ)
建築設計:
石田 有作(株式会社アーキヴィジョン広谷スタジオ)
建築設計:
堀部 雄平(株式会社アーキヴィジョン広谷スタジオ)
建築設計:
嵯峨 常功(株式会社アーキヴィジョン広谷スタジオ)

作品コンセプト:

 軽井沢の別荘地に佇む、一枚の大屋根が架けられた戸建住宅。屋根は四角い平面に対して対角線方向に傾いた、変形片流れの形状になっている。いくつかの照明手法を組合せ、主要な空間にまたがる変形勾配のルーバー天井を、美しく浮かび上がらせた。
2層吹抜の解放感あるリビングでは、窓サッシ上に納めたナローとワイドの2種類の配光を重ねた間接照明により、天井と縦ブラインドを大きく照らし出し空間全体を包み込んでいる。

講評:

 美しい木ルーバーの大きな片流れの屋根は、開口部無目に仕込まれた間接照明によって美しく浮かび上がり、室内はそのやわらかな光でつつまれている。日除けためのバーチカルブラインドが夜は間接照明の光を受け空間を印象付ける光となっている。間接照明環境下の直接照明(ダウンライト等)の設置方法や生活との関係に若干の疑問が感じられたが、とかく大型施設が目につく本賞において、それらに劣らない住宅照明デザインである。

(岩井 達弥)

入賞:デンソーグローバル研修所・保養所「AQUAWINGS」

撮影:フォワードストローク

受賞者:
本間 睦朗 (静岡理工科大学)
池畑 善志郎 (株式会社YAMAGIWA)
鈴木 豊一郎 (株式会社日建設計)
作品関係者:
事業主:
加藤 晋也(株式会社デンソー 人事部)
建築設計:
奥宮 由美(株式会社日建設計 設計部門)
建築設計:
眞庭 綾(株式会社日建設計 設計部門)
電気設備設計:
加藤 元紀(株式会社日建設計 エンジニアリング部門)
電気設備施工:
尾崎 将之(株式会社きんでん)
照明器具製造:
宮田 亜希子(株式会社YAMAGIWA)
照明制御施工・調整:
神藤 善行(神田通信機株式会社)

作品コンセプト:

 AQUAWINGSは周辺景観を内部デザインに取込んで、視覚的に一体化することを意図した。併せて、人間が本来有している余剰な光を嫌う感覚を呼び覚ますことも狙った。
余剰の排除が結果的に施設の省エネルギーに結び付くこと、さらには、人々がこの施設内に住まうことで呼び覚まされるであろう、余剰を嫌い陰影を礼賛する人間本来の感覚が、自宅などに戻った後にも、いわゆる環境配慮に姿を変えることも期待している。

講評:

 浜名湖を望む眺めの良い敷地を生かした柔らかい意匠の建物に調和するように計画された照明が、心地よく印象的な空間を生み出している。特にアトリウムのトップライトから木漏れ日を模した光の効果を生かすための昼光連動制御は独創的かつ意欲的な照明手法として評価されよう。昼光と人工照明の併用のユニークな事例として注目されるに値する作品である。

(吉澤 望)

入賞:東広島芸術文化ホール くらら

受賞者:
森 秀人 (株式会社ライティングM)
江越 充 (株式会社ライティングM)
作品関係者:
事業主:
東広島市
建築設計:
佐伯 和俊(有限会社香山壽夫建築研究所)
建築設計:
長谷川 祥久(有限会社香山壽夫建築研究所)
建築設計:
曽田 峻(有限会社香山壽夫建築研究所)
建築設計:
角沢 聡子(有限会社香山壽夫建築研究所)

作品コンセプト:

 酒処・東広島市の中心部に位置する文化芸術施設。「こもれび広場」を中心に、大小ホール、市民ギャラリー、会議室等が備わる。
日中は、なまこ壁をモチーフとしたカーテンウォールとルーバ―越しに、陰影のある光が降り注ぐ。一転して、夜には、建物全体が間接照明の光に包まれ行灯のように輝き、ランドマークとなる。自然光と人工照明の細やかな連携により、日常的で親しみやすい空間と誇らしいハレとなる場を同時に実現した。

講評:

 当該施設外観を構成するアルミルーバーには、なまこ壁を模した切込意匠があり、陽光がそこを通過し屋内床面にも菱形光模様が生まれるという自然光の巧みな取込がある。またホール壁面には、この地域に多く見られる赤瓦を想起する色彩が大胆に使われているが、それを印象的に照らし出すことで建物のランドマーク性を向上することに成功している。この施設は地域に開かれ積極活用されているが、照明がそれに寄与していると感じられる作品である。

(水馬 弘策)

審査員特別賞:太陽工業事務所・太陽工業御陵通給油所

受賞者:
興津 俊宏 (株式会社竹中工務店)
森田 昌宏 (株式会社竹中工務店)
吉野 弘恵 (アカリ・アンド・デザイン)
作品関係者:
事業主:
太陽工業株式会社
設備設計:
藤原 優也(株式会社竹中工務店)
施工者:
株式会社竹中工務店

作品コンセプト:

 ガソリンスタンドと財団事務所を、住宅地のスケールに馴染む建築群として計画。分散配置した庇は、全体に一体感を与えると共に、前面の桜並木へと続く街へ開けた雰囲気を創り出す。その鉄板格子庇を照らし上げ、明るさ感や広がりを創るアンビエントライトとし、床面を照らすタスクライトと組み合わせることで、高輝度障害を無くしながらも、店舗としてのアイキャッチを確保し、独自のアイデンティティを創り上げた照明計画とした。

講評:

 仁徳天皇陵に続く桜並木のある通りに、オフィスを併設したガソリンスタンドが建てられた。いつものお得意さまが暮らす住宅に囲まれていることから、過度な明るさを出さない配慮に加え、夜7時には閉店する潔さである。電球色のLEDを使い、ルーバー状の屋根に反射した間接光と、給油する人の手元を照らす直接光を組み合わせ、景観に配慮した柔らかく明るい一角をつくり出した。これまでに無いガソリンスタンド照明の出現である。

(近田 玲子)

2016年 照明デザイン賞 講評

総評

 審査員の構成や審査プロセスを刷新した照明デザイン賞の選考も、今年で第3回目を迎えた。回を重ねるごとに応募作品のレベルが向上し、賞の選考に対する期待の大きさを審査員一同が実感した。今年は7名の審査委員から3名が入れ替わったこともあり、現地審査の数も増やして熱のこもった審査が行われた。
 48の応募プロジェクトの中から現地審査対象の10作品を選出し、複数の審査員が分担して現地に赴き、写真撮影や照度測定なども含む詳細な検討を行った。最終審査会では様々な角度から議論をした結果、最優秀賞1、優秀賞3、入賞2、審査員特別賞1の7作品が投票と議論の中で選出された。最優秀賞は他を引き離す高得点であったが、他の6作品の得票差は僅差であり後の議論が伯仲した。本デザイン賞の審査基準に照合し、デザインの卓越性のみでなく時代に対する先進性(思想・文化・社会・技術的先進性)という点からの価値も語られた。7名の審査員の個性と責任感の強さには敬服した。

(面出薫)

最優秀賞みんなの森 ぎふメディアコスモス

最優秀賞:みんなの森 ぎふメディアコスモス

受賞者

  • 窪田 麻里株式会社 ライティング プランナーズ アソシエーツ
  • 山本 幹根株式会社 ライティング プランナーズ アソシエーツ
  • 中村 美寿々株式会社 ライティング プランナーズ アソシエーツ

 建築が素晴らしい。そして、その建築に寄り添う光が美しい。開架閲覧エリアが広がる2階には、柔らかく波打つ木屋根の下に「グローブ」と呼ばれる直径8~14mの半透明な笠が設えられ、一つの空間でありながらも開放的で多様な場所が生み出されている。この「グローブ」は、日中はトップライトから入る自然光の輝度を和らげ、夜間はLEDによる人工照明を柔らかく拡散する役割を果たす。2階のベース照明は昼光センサーにより「グローブ」を通して入って来る太陽光を主体とした昼間の明るさ、人工照明の明るさが増す夕方、人工照明だけの夜間と、時間の移り変わりに沿って調光される。照明と、建築、構造、テキスタイル、家具、サインとの、これ以上ない恊働により、「木漏れ日の差し込む森の中に明るい原っぱや緑の茂った木陰が共存しているように」「十分な机上面照度の明るい場所と落ち着いた影の場所」など、みんなを包み込む居心地の良い場所がつくりあげられた。

(近田玲子)

優秀賞ロームシアター京都

優秀賞:ロームシアター京都

受賞者

  • 長谷川 祥久有限会社香山壽夫建築研究所
  • 下川 太一有限会社香山壽夫建築研究所
  • 森 秀人株式会社ライティングM

 本施設は日本を代表する建築家である前川國男氏によって昭和35年に造られた京都会館を再整備したプロジェクトである。20世紀近代建築の価値を残し、老朽化した建物機能を刷新。一部を増築しながら建築意匠によってつくられた内装や素材を再生している。建築の歴史的また文化的な価値を継承させる光環境を目的に、スラブ天井や柱、床の煉瓦タイルなど既存の躯体を効果的に照らし、照明技法において当時の手法を残しながら最新の技術を取り入れている。昼の存在感がある建築外観は、夜は象徴的な大庇が水平ラインを光で強調し、ガラス張りの建物から漏れる優しい透過光が京都の夜の美しい景色を作っている。現地審査ではあるべき姿を再生することを重視するために、効果的な場所に照明器具を取り付けできないジレンマを垣間見たが、これから増えていく歴史的建造物の修復やリノベーション建築に対する照明手法の在り方に提言を投げかけたことが評価された。

(松下美紀)

優秀賞柏たなか病院

優秀賞:柏たなか病院

受賞者

  • 松村 正人大成建設 設計本部
  • 井内 雅子大成建設 設計本部
  • 東海林 弘靖ライトデザイン

 つくばエクスプレス、柏たなか駅前に建つ総合病院である。アトリウムを中心とした医療機能と通院機能との分棟配置は、柱梁のアウトフレーム構造や建築構成を素直に表現した外部照明とともに市民に分かり易く、新興地域のランドマーク形成に成功している。内部の照明計画では、徹底した間接照明や昼光利用、曲線状のコーブ天井など建築と一体となった遊び心によって、病院が本来保有すべき「療養環境」としての光の質を体現している。一部ディテールにおいて更なる研鑚が望まれる点もあるが、診療行為に必要な「明るさ」を確保することだけに終始しがちな従来の病院照明計画に対して、患者の癒しのために必要な「暗さ」を施主と一体となって追求し、今後の病院照明のあるべき姿を提示したことが高く評価された。

(植野糾)

優秀賞日本橋室町東地区開発-コレド室町・福徳神社

優秀賞:日本橋室町東地区開発-コレド室町・福徳神社

受賞者

  • 團 紀彦團紀彦建築事務所
  • 武石 正宣ICE都市環境照明研究所
  • 内原 智史内原智史デザイン事務所

 このプロジェクトは江戸時代からの歴史を誇る日本橋室町に出現した官民一体型のエリア開発の成功例である。照明デザインが江戸情緒と賑わいの演出に大きく貢献している。
  審査対象の範囲が広範に渡り、しかも長年にわたる開発途上のプロジェクトでもあることから、受賞対象は主に建築ファサードと公共街路、そして福徳神社境内と判定したが、商業施設のインテリアにも拘った光環境のデザインが随所に見られた。街区計画としては、4つの街区を一つの都市再生特区として開発している。
  この種の仕事は事業者と建築設計者+施工者との綿密な協議を積み重ねることが重要だが、2社の照明デザイン事務所は粘り強く官民の施主や施工者との協議や調整を重ねている。その結果として、賑わいのある連続した商業ファサードを保ちながら、一体的な歩行空間の繋がりを作り上げている。多種類の照明手法や技術が混在した感もあるが、今後の開発プロセスにも期待が寄せられる。

(面出薫)

入賞ザ・リッツ・カールトン京都

入賞:ザ・リッツ・カールトン京都

受賞者

  • 金田 篤士株式会社ワークテクト
  • 黒瀬 俊英株式会社ワークテクト

 京都市内鴨川畔に位置するこの低層型ホテルは2014年2月にオープンした。古都景観に溶け込む和テイストの建築、内装意匠に呼応する照明は、壁面意匠、アートワーク、格子パーティション、床面に至るまで作り込まれ、直接照明を極力控えた細やかな設えとなっている。この設計姿勢は共用部から客室まで徹底された。夜間外観は、鴨川に面した客室から滲む蝋燭に近い色温度光が各々窓を行燈のように見せ、京都らしい穏やかな佇まいを醸している。

(水馬弘策)

入賞東京国立博物館 正門プラザ

入賞:東京国立博物館 正門プラザ

受賞者

  • 澤田 隆一有限会社 サワダライティングデザイン&アナリシス
  • 木村 佐近株式会社 安井建築設計事務所 企画部
  • 棈木 賢一株式会社 安井建築設計事務所 設計部

 東京国立博物館の正面入口前に作られたチケット売場・ミュージアムショップを併設する建物である。すっきりとした建築意匠に添った過不足のない美しい照明計画となっている点が高く評価された。天井を照らし出す間接照明が柔らかい照明環境を作り出しているが、照明器具が目立つことなく美しい光の空間を造り出している。色温度と明るさが1日を通して変化する点も時流に沿った提案であると言えよう。

(吉澤望)

審査員特別賞技術センター ZEB実証棟

審査員特別賞:技術センター ZEB実証棟

受賞者

  • 山口 亮大成建設(株) 設計本部
  • 関 政晴大成建設(株) 設計本部
  • 張本 和芳大成建設(株) 技術センター

 ZEBとはネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略で、年間の1次エネルギー消費量がネットでゼロとなる建築のことをいう。これは国のエネルギー基本計画に基づき2020年までに新築公共施設で、2030年までに新築建築物の平均で導入を目指すという政策目標が設定されている。本施設は実験棟ではあるが、現実のオフィスとして使用可能な形で2年近くネット・ゼロ・エネルギーを達成し、パッシブ昼光導入+人工光照明システムがそれに寄与している。昼光、天井間接照明、下向き直接照明、有機ELタスクスタンドの5つの光を、照度、人感、時間などの要素で緻密なシミュレーションに基づいた制御をし、快適な光環境を実現している点が評価された。一方で室内に導入された昼光が天井に映す煩雑なライン状の光のパターンに対する懸念や照明器具の光学設計の平凡さなどが指摘されたが、今後さらに洗練された照明デザインへの進化を期待して審査委員特別賞を贈ることとした。

(いわいたつや)

2015年 照明デザイン賞 講評

総評

 照明デザイン賞のあり方が刷新されて今年は2年目を迎える。審査員の人数を7名に絞り込み、現地審査方式を取り入れ、更に審査過程や内容に透明性を持たせることに注力した初年度であった。今年は期待通りに昨年を上回る応募総数を得て、更に応募作品の質もプレゼンテーションの内容も向上している。それだけに審査員は様々な視点を戦わせ、真摯な態度で議論を交わし審査を行った。
 今年は現地審査の数を4点から7点に増やしたので、より一層議論が白熱し昨年以上に精度の高い審査が行われた。また、大型施設やバランスの良い作品ばかりが受賞する傾向を回避するために、今年は「審査員特別賞」を新設した。これは優秀賞には至らなかったが見過ごせない独特の内容を持った作品に対する評価である。
 議論の結果、最優秀賞は照明デザインのコンセプトからディテールまでの高い完成度が評価されたが、他の受賞作品もそれに迫る品質と独自性が評価された結果である。

(面出薫)

最優秀賞京都国立博物館 平成知新館

最優秀賞:京都国立博物館 平成知新館

受賞者

  • 谷口 吉生谷口建築設計事務所
  • 岩井 達弥岩井達弥光景デザイン

 本施設は国宝や重要文化財を含む、幅広い文化財を展示する国立博物館である。優れた建築設計の意図を損なわずに、展示物を主役にした繊細でフレキシブルな照明設備のシステムが高く評価された。 建築照明デザインの仕事の中で、美術館照明は最も洗練された知識と経験とクリエイティビティが要求される。建築設計者、学芸員、鑑賞者という3種類の異なる立場での課題(美術品の保護、鑑賞の快適性、空間の快適性)を丁寧に解決して行かねばならない。本施設の照明デザインはそれらの要素に対して、執拗なプロセスを積み重ねて完成されている。 展示室の照明は最新のLED照明技術を駆使しながら、作品の保護を前提に、照度を抑え展示物に合ったきめ細やかな光の質を選択できるよう、フレキシブルで高機能な照明設備を整えている。昼に優美な建築外観は、夜に内部から溢れ出る照明によって優しい行灯のように輝き立ち、京都ならではのランドマークを創出している。

(面出 薫)

優秀賞大手町タワー

優秀賞:大手町タワー

受賞者

  • 面出  薫株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ
  • 田中 謙太郎株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ
  • 坂野 真弓株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ

 本施設はオフィス、ホテル、及び共用部吹き抜けの3つの用途を持ち、低層部は共通のガラスファサードで一体感を演出しつつ、ガラス内の壁面の素材を変えることで、それぞれの表情を創り出す。各部位ごとに工夫された照明手法がこの表情を一層引き立てている。地下公共通路は、立体感のある天井に対し、ダウンライトをスリット内に配置することで、柔らかですっきりした光環境としている。飲食店舗部分の一部通路は、全く異なる照明手法、器具を採用することで、対比的に雑多な横丁の雰囲気を楽しめる。吹き抜け空間は、屋外の植栽空間を見せるための映り込み、輝度バランスの最適化が、照明手法と内装デザインの工夫により見事に実現されており、3層のレイヤーに構成された奥行き感のある庭園照明と相まって、室内から庭園の夜景を楽しめる環境が実現された。全体を通して、建築空間を活かす、しっかりした技術に裏打ちされたきめ細かな照明空間となっている。

(海宝幸一)

優秀賞東京都庭園美術館新館

優秀賞:東京都庭園美術館新館

受賞者

  • 安東  直株式会社久米設計
  • 澤田 隆一有限会社サワダライティングデザイン&アナリシス
  • 石井 彩恵有限会社サワダライティングデザイン&アナリシス

 本施設の照明デザインで評価されるべき点は、第一に美しく心地よい空間が成立しているところではあるが、さらにそのプロセスにおいて、照明デザインが建築の形状決定に強い影響を与えながら良い建物を作り出している点、また美術館における昼光照明の影響を詳細に検討している点が高く評価されよう。そもそも応募資料においてシミュレーション結果の説明に多くの紙面を割いており、他の応募作品と異なり見栄えを強調する写真が少なかったことがまず印象的であった。見栄えだけが照明デザインの目的ではない、ということはこの照明デザイン賞の狙いでも繰り返し述べられてきたが、そのことを真正面から捉えて実際の応募資料としてきた本作品については、今後のデザイン賞の一つの方向性を示したものとして、ぜひ多くの方にも一見いただければと思う。職人的な照明デザインと論理的なデザインプロセスが融合した稀有な事例として高く評価されよう。

(吉澤望)

優秀賞三井住友銀行大阪中央支店

優秀賞:三井住友銀行大阪中央支店

受賞者

  • 塚本 直子株式会社竹中工務店
  • 君塚 尚也株式会社竹中工務店
  • 小梶 吉隆株式会社竹中工務店

 1936年に作られた歴史的な建造物を、これからも長期間にわたり「銀行」として使い続けるため、修繕工事にあわせて照明デザインを刷新した注目すべきプロジェクトである。1982年に照明リニューアル工事が行われているが、すでに30年が経過し業務に必要な照度も取れていなかった。装飾天井の洗浄や修復に加え、さらに、トップライトを修繕。また、全体照度を確保するために新しい照明器具が開発されている。空間要素の価値を高め、既存の建築を活かすためにデザインされた、存在感を抑えたリング状のシャンデリアであり、上面と下面を照らす構造でLED光源を用いている。銀行として使 用されながらの工事、また地震での揺れを考慮した力学計算など歴史的建造物ならでの困難を乗り越えて、審美性を備えた空間構成が実現されている。空間全体で明るさ感を向上させながら、修復された天井装飾も忠実な色で美しく照らし出され、実に荘厳な趣を醸し出している。

(松下美紀)

審査員特別賞KUZUHA MALL南館ヒカリノモール

審査員特別賞:KUZUHA MALL南館ヒカリノモール

受賞者

  • 川原村 真幸株式会社竹中工務店
  • 松井  秀吉株式会社竹中工務店
  • 納見   聡株式会社竹中工務店

 本施設への主動線である既存本館との連絡通路に正対し、駅前の大通りにも面した主たる壁面を商業施区の街路景観として良質なものにしている。その立面上部、全体面積の半分以上が立体駐車場の開口部になってしまうという難題の解決手腕が、照明デザインとともに着目された。その軽快なファサードデザインは、昼光による表出と夜間の内照効果を丹念に実地検証して設計されているだけでなく、その意匠が法令遵守(消防)、機能確保(通風、耐候性など)、コストパフォーマンスと高次元で融合している。設計に多くのハードルがあることは世の常であり、法令や機能が意匠に優先されることも常であるが、本件はその点において妥協がないことが特に高く評価された。

(澤田隆一)

入賞シェアリーフ西船橋GRACENOTE

入賞:シェアリーフ西船橋GRACENOTE

受賞者

  • 伊藤 秀明日本土地建物株式会社
  • 志村 美治株式会社フィールドフォーデザインオフィス
  • 森  秀人株式会社ライティングM

 30年近く経過した研修施設をコンバージョンし、音楽を施設コンセプトに据えたユニークなシェアハウスである。インテリアと照明はこの音環境と呼応するようにアンビエントとフォーカス、ベースとアクセントなどのデザイン手法による小気味良い空間づくりが特徴となっている。また照明は時のうつろいを大切に計画されており、とりわけ夕刻以降のコミュニケーションや雰囲気づくりに大きな役割を果たしていることも評価につながった。

(富田泰行)

入賞東京スクエアガーデン

入賞:東京スクエアガーデン

受賞者

  • 嶋田 将吾清水建設株式会社
  • 渡辺 岳彦大成建設株式会社
  • 金田 篤士株式会社ワークテクト

 京橋交差点に建つ大型複合施設である。高層棟を中央通りから23mセットバックさせ、張り出した低層部に配置した立体的緑化空間「京橋の丘」が特徴的だ。樹木のライトアップは、ランダムに積層された庇に風に揺れる樹形を映り込ませ、京橋の夜の風景を上品に演出する。光はほかに室内から溢れるアクティビティのみ。広告灯を排除し色温度を制御して、成熟した都市空間を実現している。建築と照明のデザイン協働の成果であろう。

(植野糾)

2014年 照明デザイン賞 講評

全体審査講評/審査委員長:面出 薫

はじめに

 私はこれまでに、建築デザイン賞、インテリアデザイン賞、景観デザイン賞、写真賞、製品デザイン賞、デザイナー業績賞、など数々のデザイン賞に委員(または委員長)として参加した経験を持つが、照明デザイン賞のみが特有の難しさを持っていると痛感する。形の美しいもの、プロポーションの良いもの、使いやすいもの、頑張った人などに与える賞は解り易い評価基準を持っているが、照明に関わることはそのように単純で一義的な価値では量ることができないからである。  照明学会・照明デザイン賞の審査にも、多くの異なる意見や評価があることを前提にしながら、しかし明確な視点をもって最終的には賞の決定という勇断を迫られる。賞の審査とは万人にとっての最適解を探し当てることではなく、多くの文化的議論を積み重ねる中身にこそ真価を問われるものであるから、賞の審査結果は発表されたが、照明デザイン賞の本当の議論は、今ここから始まるものではないだろうか。

 以下に、最優秀賞1点、優秀賞2点、入賞4点の審査評を応募番号順に掲載する。

最優秀賞電算新本社ビル オフィスアンビエント照明

最優秀賞:電算新本社ビル オフィスアンビエント照明

受賞者

  • 中尾 理沙株式会社日建設計
  • 小高 孝司株式会社日建設計
  • 阪口 勝啓株式会社竹中工務店
  • 會澤 達也株式会社トーエネック
  • 本間 睦朗株式会社日建設計
  • 中村 芳樹東京工業大学

 本プロジェクトは長野県長野市に新設されたIT系企業のための革新的なオフィス照明環境である。従来のオフィス照明が視作業のための机上面照度に偏重しがちであったことに対して、更に高品質な作業空間を実現するために、輝度設計を重視した新型アンビエント照明を考案し、明るさ感を向上させながら画期的な省エネルギー(5W/m2)も実現している。
 作業者の視野に快適な輝度を与えるために、天井面から245㎜の特殊な導光坂が1600ピッチにルーバーのように配置されている。
 これほどまでシンプルな照明システムで、机上面照度と視野内のアンビエント効果の両者を満足させ、その絶妙なバランスを探し当てた点は画期的である。多様な実験段階の検証を積み重ねて、自発光パネルのアンビエント照明の有用性を、理論に留めずに実現させた点が評価された。現地審査では理論と実践との間の多少の乖離も見られたが、今後の更なる展開に期待することとした。

(面出 薫)

優秀賞伊勢神宮 式年遷宮記念 せんぐう館

優秀賞:伊勢神宮 式年遷宮記念 せんぐう館

受賞者

  • 栗生  明栗生明+栗生総合計画研究所
  • 岩佐 達雄栗生明+栗生総合計画研究所
  • 北川 典義栗生明+栗生総合計画研究所
  • 面出  薫ライティング プランナーズ アソシエーツ
  • 窪田 麻里ライティング プランナーズ アソシエーツ

 式年遷宮の意味を広く伝える目的で建てられた展示館である。神宮の深い緑に囲まれ、大らかな切妻屋根のもとに展示空間が展開する。何よりも特徴的なのは、建築と照明との一体化だ。建築家と照明デザイナーが初期から共同し、計画の骨格から細部デザインに至るまで、成熟した技術と深い愛情により実現された。照明デザインで特筆すべきは3点。一つ目は、内部の暖かい光を池の水面に映すだけの、そぎ落とした夜景。満月がひときわ引き立つ暗さ。二つ目はシークエンスを演出する自然光。南回廊では池の反射を深い軒天で揺らぎの光に変え、北回廊では砂利の光が地窓から床を照らす。最後は御正殿展示室の天空光に見立てた切妻型光天井。懐400mm、高さ10mを下部のみの光源で均質光を実現。さらに金箔装飾をキラキラ輝かせる隠し照明が、緊張感をさりげなく演出する。いずれも技能と文化を未来に残してゆこうという式年遷宮のものづくり精神を、十分感じさせてくれる。

(植野糾)

優秀賞明治安田生命新東陽町ビル

優秀賞:明治安田生命新東陽町ビル

受賞者

  • 菅  順二株式会社竹中工務店
  • 帽田 秀樹株式会社竹中工務店
  • 本村 哲也株式会社竹中工務店
  • 戸恒 浩人有限会社シリウスライティングオフィス
  • 小林 周平有限会社シリウスライティングオフィス

 生命保険会社の事務センターと研修宿泊所の複合施設である。大きなフロアを大小4つのスペースで構成し、1/4ずつステップアップしたスパイラルフロアが建築的特徴で、建築を象徴する内部吹抜空間にはフロアを繋ぐフライングスロープと張弦梁より吊り下げられた外部光庭が存在する。スロープの天井面を計算された反射光が照らし、人々の移動の明るさを確保しながら、見上げの空間を壮大に演出しているとともに、さまざまな空間構成要素と融合した照明がそれぞれの場所で美しい光環境を創り出している。照明デザイナーは時折、新しい構造の建築デザインに参画するチャンスに恵まれる。予算や時間、また構造との取合いなど多くの困難と立ち向いながらも、光環境創出のために真摯に役割を果たすことで、プロジェクト全体の成功を導ける。まさにこの作品は与えられたチャンスに、照明デザイナーとして最大の力を傾注したことが素晴らしい結果を創っている。

(松下美紀)

入賞聖ウルスラ修道会本部修道院・カトリック 一本杉教会

入賞:聖ウルスラ修道会本部修道院・カトリック 一本杉教会

受賞者

  • 大山  博大山博建築設計事務所
  • 三角 兼一郎清水建設株式会社
  • 丹野 俊雄清水建設株式会社
  • 奥井  繁清水建設株式会社
  • 関川  智株式会社遠藤照明
  • 棚橋 太治株式会社遠藤照明

 2011年東日本大震災で被災した修道院と教会の建替に伴う照明デザインである。聖堂祭壇部の間接照明や聖堂内部のLEDペンダント照明、さらに正面ファサードの行灯効果などは、教会建築照明として過不足のないシンプルで美しいデザインとして高く評価されよう。またステンドグラスの再利用による歴史・記憶の継承というコンセプトも「多様な地方文化の継承」という審査基準の一つに合致した。

(吉澤望)

入賞IDEC本社・技術研究センター

入賞:IDEC本社・技術研究センター

受賞者

  • 池田 昌順IDEC株式会社
  • 大平 直子鹿島建設株式会社
  • 山野上 和志鹿島建設株式会社
  • 安東 克幸大光電機株式会社

 本作は各種制御装置・LED照明等を製造するIDEC株式会社の本社・技術研究センターである。自社が照明器具を開発、製造する場合、ともすれば突飛なデザインに傾きがちであるが本作の場合、外観照明は品格を保ち、屋内は誘導性や暗示的サイン機能を有し、研究開発エリアにおいてはその業務が欲する機能に対し洗練された設備設計がなされている。技術伸展の速いLED照明において、その先進性のみに偏らない照明デザインが評価された。

(澤田隆一)

入賞穂の国とよはし芸術劇場

入賞:穂の国とよはし芸術劇場

受賞者

  • 長谷川 祥久有限会社香山壽夫建築研究所
  • 臼井 直之有限会社香山壽夫建築研究所
  • 山口  亮大成建設株式会社
  • 森  秀人株式会社ライティングM
  • 加賀美 鋭株式会社ライティングM
  • 江越  充株式会社ライティングM

 アートスペース、創作活動室など、創造的な空間を目指した施設を象徴する表情豊かな光を構築した。オーロラ照明とネーミングされた壁面照明は、外壁ディテールを活かしてその曲線を美しく表現する。レンガ壁への陰影に富んだ照明は、壁面材料と光源色によりオーロラ照明に対して、ヒューマンスケールの優しさを強調している。また、室内照明は光源を意識させず、床、壁等の建築構成要素を心地よい光のコントラストで演出している。

(海宝幸一)

入賞グランフロント大阪 まちをつなぐ賑わいの照明  ~うめきた広場からザ・ガーデンまで~

入賞:グランフロント大阪 まちをつなぐ賑わいの照明  ~うめきた広場からザ・ガーデンまで~

受賞者

  • 澤村 晋次株式会社日建設計
  • 川島 克也株式会社日建設計
  • 西堀 正樹株式会社三菱地所設計
  • 小川 克憲株式会社NTTファシリティーズ

 大阪駅に直結する当該施設は4つの街区の建築を一貫したストーリーでつなぎ、ひとつの街として誕生させた大規模複合施設である。
 敷地内にはエリアごとに魅力ある光が配され、滞留と回遊、賑わいと静寂などの固有の場づくりに照明が大きな役割を果たしている。また、「民」の照明による「公」のグレードアップや店舗の滲み出しなどが街全体の活気を生んでいることも大きな要因となり、多面的な光環境への取組みが評価につながった。

(富田泰行)

第11回(2013)

「博多ライトアップウォーク2012」

「博多ライトアップウォーク2012」

受賞者

  • 松下 美紀(博多ライトアップウォーク実行委員会)まつした みき

博多の秋夜を彩るライトアップイベント『博多ライトアップウォーク2012』。本イベントは福岡市の祭りとして2006年からスタートして、2012年で7回目を迎え、7万5千人を超える来場者で賑わう。会場のひとつ博多区御供所町は1998年に福岡市の都市景観条例に基づいて景観保全地区に指定されている。博多の中心地に位置するが、表通りから一歩足を踏み入れると400年前の太閤町割りの名残を留める街並みが見られ、由緒ある寺院・神社が数多く残るエリアでありこの町の魅力を市民や来訪者に知らしめる福岡市観光施策『博多秋博』の一環として実施されている。各寺院・神社のライトアップデザインは、協力照明メーカー各社に委ねられ、総合監修を照明デザイナーの松下美紀が行う。ライトアップ対象の東長寺、順心寺、承天寺、円覚寺、櫛田神社、節信院、妙楽寺、計7つの社寺を、照明メーカー16社で分担して実施する。

第11回(2013)照明デザイン賞受賞詳細「博多ライトアップウォーク2012」(PDF形式)

「東京電機大学東京千住キャンパス」

「東京電機大学東京千住キャンパス」

受賞者

  • 槇  文彦株式会社槇総合計画事務所
  • 澤田 隆一有限会社サワダライティングデザイン&アナリシス
  • 中村 友香有限会社サワダライティングデザイン&アナリシス

学生と街の人々が、昼間と同様に夜間も安心して利用できる光環境を計画することで、キャンパス内で多様な活動が生まれ、表情豊かな街並みの風景を作り出している。

第11回(2013)照明デザイン賞受賞詳細「東京電機大学東京千住キャンパス」(PDF形式)

第10回(2012)

「街に光を貼り付ける参加型イルミネーション」

「街に光を貼り付ける参加型イルミネーション」

受賞者

  • 村川和隆東京都市大学大学院 工学研究科建築学専攻 小林研究室
  • 鈴木 亮東京都市大学 工学部建築学科 小林研究室
  • 長谷川瞳東京都市大学 工学部建築学科 小林研究室
  • 宮島奈緒東京都市大学 工学部建築学科 小林研究室

 地域愛着を生むために街の人の手によるイルミネーションを実現するための活動。住民(子ども)が自分で考え、自分の手で街に光を取りつけるイルミネーションを通して、街の景観、シークエンス、認知、愛着、公共性、防犯などの項目を総合的に高めることを目指している。
 自分が住みたい街のイルミネーションを模型空間にLED で表現してもらい、実際の街でLED と磁石を用いて街に貼り付けてもらった。扱いやすい材料と場を提供し、普段意識することの少ない街の光について、光の効果と場所との関係を自分たちで考えさせることを基本テーマとしている。

「第10回(2012)照明デザイン賞受賞詳細」(PDF形式)

第9回(2011)

「羽田空港第二旅客ターミナルビル増築」

「羽田空港第二旅客ターミナルビル増築」

受賞者

  • 友澤 薫株式会社日建スペースデザイン
  • 橋口幸平株式会社日建スペースデザイン
  • 藤田悠吾株式会社日建スペースデザイン
  • 堀江 徹株式会社ホリテック

 最新照明技術と照明デザイン技法により、多様なシーンを演出している。生体リズムを考慮した的確な昼光制御、LED光源の適所への使用により省エネも図れている。空港という社会的な空間を光によって積極的に演出していながら、過度な光となっていないことが評価される。

東京国際空港国際線ターミナル

東京国際空港国際線ターミナル

受賞者

  • 内山 裕二羽田空港国際線PTB 設計共同企業体
  • 守屋 良則羽田空港国際線PTB 設計共同企業体
  • 内原 智史羽田空港国際線PTB 設計共同企業体

 天井面の照明を最小限とした大空間の照明手法として高く評価できる。色温度、照度のバランスが良く、内部空間と周辺環境の調和が取れた外観の総合的なバランスがよい。LED、光ファイバなどの使用により省エネも図れている。コンセプトが明快で、光によって空間を印象づけられ、日本の空の玄関としての機能美、デザイン性が高く評価できる。

奨励賞「Jiwari-moonlight」

奨励賞「Jiwari-moonlight」

受賞者

  • 進藤 正彦進藤電気設計

 木製の器具とタッチパネルの一体化を図ったことは新しい試みとして評価できる。LEDの使用と自動点灯/消灯機能による省エネ性は評価できる。

奨励賞「勝どきビュータワー「カチッ ドキッ クロック」」

奨励賞「勝どきビュータワー「カチッ ドキッ クロック」」 奨励賞「勝どきビュータワー「カチッ ドキッ クロック」」

受賞者

  • 渡辺 靖夫カラーキネティクス・ジャパン株式会社
  • 木村 政喜独立行政法人都市再生機構
  • 中村 保独立行政法人都市再生機構
  • 石原 晋独立行政法人都市再生機構
  • 勝 大河独立行政法人都市再生機構
  • 色部 義昭株式会社日本デザインセンター
  • 軍司 匡寛株式会社日本デザインセンター
  • 齋藤 裕行株式会社日本デザインセンター

 場所の特性を生かし、LEDのグラフィックの完成度が高く、環境アートサイン性が評価できる。現地の今の時間と人との繋がりを示すコンテンツ内容を検討すれば将来性がある。

第8回(2010)

「アステラス製薬つくば研究センター(御幸が丘)」

「アステラス製薬つくば研究センター(御幸が丘)」 「アステラス製薬つくば研究センター(御幸が丘)」

受賞者

  • 宮下 信顕(株)竹中工務店
  • 山口 広嗣(株)竹中工務店
  • 田中 誓子(株)竹中工務店
  • 高嶋 一穂(株)竹中工務店
  • 角舘 政英ぼんぼり光環境計画

 限られた空間だけではなく、トータルでサーカディアンリズムを考慮に入れた設計手法は評価に値する。また、色彩性に優れ、夜間景観の美しさ、ランドスケープとの調和性に優れており、オフィス空間での景色の変化が人との相互コミュニケーションが取れている点でも評価に値する。経済性の面でもHf蛍光灯とLED照明を組み合わせており、光量の適正化が図られている。

奨励賞「THE AQUA TERRACE 照明演出」

奨励賞「THE AQUA TERRACE 照明演出」 奨励賞「THE AQUA TERRACE 照明演出」

受賞者

  • 橋爪 大輔(株)ダイスプロジェクト
  • 馬渡 秀公アカリファクトリ-

 ランプ・シェードが創る「光の意匠」と植栽が天井に描く「影の意匠」とによる空間演出は独創的で評価できる。昼から夜の変化の調和が取れており、まとまったイメージの表現が評価できる。

奨励賞「六本希」

奨励賞「六本希」 奨励賞「六本希」

受賞者

  • グループ名:
    明星大学理工学部建築学科イルミネ―ターズ
  • 代表:庄司 絵里明星大学

ほか15名

 イルミネーションを造形物に仕立てた面白さがあり、発想に評価すべき点が見られる。全体的な意匠の独創性には欠けるが、建築を学ぶ学生の作品として評価し、今後の発展性に期待したい。

第7回(2009)

「ホテル日航金沢 ラ・グランドゥ・ルミエール」

「ホテル日航金沢 ラ・グランドゥ・ルミエール」 「ホテル日航金沢 ラ・グランドゥ・ルミエール」

受賞者

  • 戸井 賢一郎株式会社日建スペースデザイン
  • 米澤 研二株式会社日建スペースデザイン
  • 重田 利生株式会社日建スペースデザイン
  • 堀江 徹株式会社HORITECH
  • 野村 宏幸株式会社HORITECH

 カーテンの有無による光の制御をおこなうことで2つの異なる空間を演出しており、またレーザカットで作る「紋様」の種類により様々な演出プログラムを展開できる柔軟性を持っている。光・素材・空間の関係を十分活かした好例として高く評価する。

奨励賞「東京大学くうかん実験棟」

奨励賞「東京大学くうかん実験棟」 奨励賞「東京大学くうかん実験棟」

受賞者

  • 平沼 孝啓Hs WorkShop-ASIA

自然光と壁・室内空間の関係をうまく取り入れている。実験棟全体の建築材料を含めてエコロジカルな手法を大胆に活用する手法は社会的に意義があり高く評価する。

第6回(2008)

「AGCモノづくり研修センター」

「AGCモノづくり研修センター」 「AGCモノづくり研修センター」

受賞者

  • 山口 宏嗣株式会社 竹中工務店 設計部
  • 宮下 信顕株式会社 竹中工務店 設計部
  • 田中 誓子株式会社 竹中工務店 設計部
  • 角館 政英ぼんぼり光環境計画

 光のスペクトラム・コミュニケーションの活性化をテーマにして、光環境・建築・家具等がトータルに計算されて完成度高く創られている。光・色・形態を一体で考える重要さを教えられる良い事例として高く評価できる。

奨励賞「Campus Illumination 2007」

奨励賞「Campus Illumination 2007」 奨励賞「Campus Illumination 2007」

受賞者

  • 小林 茂雄武蔵工業大学 工学部建築学科

 学生が自力で作成した点は、今後、照明に携わる人材の育成としての効果を期待できる。照明をテーマとしたイベントとしての一定のレベルは維持されており、他団体への火付け役となり、照明に対する世間の意識向上も期待できる作品である。

奨励賞「aiwest office」

奨励賞「aiwest office」

受賞者

  • 平沼 孝啓Hs WorkShop-ASIA

 光壁をパーティションとして利用した点の独創性を評価する。柔らかい形態と光とで無機質になりがちなオフィス空間に潤いを与えている。今後のオフィス環境に新たなプロダクト開発の可能性を示唆した。

第5回(2007)

「ホテル日航東京チャペル“ルーチェ・マーレ”」

「ホテル日航東京チャペル“ルーチェ・マーレ”」 「ホテル日航東京チャペル“ルーチェ・マーレ”」

受賞者

  • 戸恒 浩人シリウスライティングオフィス

 お台場のホテル日航東京に新設されたチャペル“ルーチェ・マーレ”は、レインボーブリッジと東京タワーが望まれる。外部に既存のピロティ空間を改築し、バージンロードと
して特殊型ガラスを使用した光の回廊を設け、「深海から地上へ ~ヴィーナスの誕生~」をナイトウェディングのコンセプトとしている。LED、ローボルトハロゲンランプ、光ファイバー、キセノンランプなどを使用して、深海から地上へ上がっていくストーリーを感じさせる光空間を演出した。この作品は「光を用いて創作した空間・環境アートなどの作品」にふさわしく、照明デザイン賞に推薦する。

奨励賞「浜離宮恩賜庭園ライトアップ『中秋の名月と灯り遊び』」

奨励賞「浜離宮恩賜庭園ライトアップ『中秋の名月と灯り遊び』」 奨励賞「浜離宮恩賜庭園ライトアップ『中秋の名月と灯り遊び』」

受賞者

  • 戸恒 浩人シリウスライティングオフィス
  • 小林 周平シリウスライティングオフィス
  • 吉田 優子シリウスライティングオフィス

 汐留や浜松町の高層ビル群に囲まれた、特殊な環境の中での浜離宮恩賜庭園のライトアップイベントである。庭園の素晴らしさを光によって素直に表現し、浜離宮の魅力を再発見している。イベントとしてはおもしろく今後このような事例を期待して、奨励賞に推薦する。

奨励賞「読売北海道ビル」

奨励賞「読売北海道ビル」 奨励賞「読売北海道ビル」

受賞者

  • 新居  仁三菱地所設計
  • 渡邉 顕彦三菱地所設計
  • 松井章一郎三菱地所設計
  • 渡邊 剛良三菱地所設計
  • 高野 勇治三菱地所設計
  • 原田  仁三菱地所設計
  • 松永 頼秀三菱地所設計

 札幌駅前広場に面する読売北海道ビルの外装は、透過率と反射率の異なる3種類の材料と、窓周りに電球色冷陰極管を配置し、昼、宵、夜間、深夜の変化に富んだ表情を創り出している。グラフィカルな外壁と光の効果をうまく結びつけたファサードデザインが、新たな街の景観を創りだしている点を評価する。奨励賞に推薦する。

第4回(2006)

「SETRE REVER HOTEL+OCEAN」

「SETRE REVER HOTEL+OCEAN」 「SETRE REVER HOTEL+OCEAN」

受賞者

  • 芦澤 竜一芦澤竜一建築設計事務所

 既存施設を改修したホテルで、チャペル、エントランス、レストラン、客室等で建築と照明を一体的に考えた、環境に順応しながら「癒しと驚き」を与える照明計画がコンセプトとなっている。  また、海に面していることや、海峡大橋といった敷地の特性を活かし、場所の魅力を引き出す工夫がなされている。

  • デザインを活かし、融合性・バランスに優れている。
  • 建築と光のあり方を示したものとして、評価に値する。
  • 全体として発展につながる的確な手法を踏んでおり、建物リニューアルの効果が十分示されている。

奨励賞「POCOMZ」

奨励賞「POCOMZ」 奨励賞「POCOMZ」

受賞者

  • 坂本 恭一慶應義塾大学
  • 斉藤 賢爾慶應義塾大学
  • 重藤  彩慶應義塾大学

 インターネットを活用して光の照明を別空間にいる他者に伝達し、共有させることができる照明オブジェクト。オブジェクトにフルカラーLEDと制御するマイコンが組み込まれており、6通りの色を自由に変化させることができる。

  • 情報伝達に特化して応募してきているが、照明デザインの新しい概念を広げる緒を示した作品として、今後の展開につながるものと考える。
  • 見る人の生理・心理について知見を深め、空間の創造につなげてほしいと期待する。

奨励賞「尾道消防防災センター」

奨励賞「尾道消防防災センター」 奨励賞「尾道消防防災センター」

受賞者

  • 伊藤  彰久米設計
  • 坂上 真理松下電工

 住民に安心感を抱かせる「やさしく発光するオブジェ」。先進的な防災情報を司る「最新鋭の機能をもったコントロールセンター」としての夜間中も地域の中心として存在する演出光、「快適な勤務環境」として癒しと落ち着きのある柔らかな光空間の演出等がコンセプトであり、新しい尾道の夜景の拠点となることが期待できる作品。

  • 公共性、先見性を有する光演出で、地域の夜景に貢献することが大きい。
  • デザイン性のインパクトが大であり、遠景としてのランドマークの役割を果たしていることは評価できる。

第3回(2005)

「ルネ青山ビル」

「ルネ青山ビル」 「ルネ青山ビル」

受賞者

  • 山梨 知彦日建設計
  • 石田  亨日建設計
  • 勝矢 武之日建設計

 街のアクティビティに反応して明滅するダブルスキンの作品巨大な場ダブルスキンのショーケースが、通りに面した壁全体を構成し、ショーケースはリブガラスに組み込まれたLEDによって発光する。スキン全体がプグラム制御されており、建物に取り付けられたセンサーが、人の動きや街の音を感知してさまざまに発光する仕組みになっている。
 都市の音と光を関連づけた表現であり、建築ファサードの特徴、ガラスの素材感、光の特性が存分に活かされており、当賞に相応しい作品となっている。

  • 独創性、進歩性、感動性で高い評価を得た作品で、瞬時に制御可能なLEDの点滅というテクノロジーを駆使した作品である。
  • ファサードの光は常時振動し、明滅を繰り返しながら複雑な変化を楽しむことができ、青山の街の景観にアクセントを与えている。

「中国河南省鄭州市金水路立体交差橋」

「中国河南省鄭州市金水路立体交差橋」 「中国河南省鄭州市金水路立体交差橋」

受賞者

  • 許 東亮東芝照明(北京)
  • 植田 慶幸東芝照明(北京)
  • 顔  華東芝照明(北京)

 都市発展の象徴としての立体交差橋を対象物として、新都市作品である。立体交差橋のスピード感と橋を支える力感を表現し、道路網の充実をシンボリックにアピールしている。近代化の流れ、スケールの大きさを象徴する夜間景観を見事に演出しており、本賞に相応しい作品となっている。

  • 橋梁部分の照明に連続性を持たせることによって流動感を出し、高架部分の高欄照明が、都市の発展性を表現している。橋のフォルムの美しさがシンプルな光の手法によって相乗的な演出効果を出しており、スケールの大きさ、力強さが感じられる。

奨励賞「花の小路」

奨励賞「花の小路」 奨励賞「花の小路」

受賞者

  • 外山 和晃京都造形大学
  • 青木 大輔京都造形大学
  • 桂  晃子京都造形大学

 約20万球のイルミネーションを使った、公園を彩る京都府のある市のイベントの出展作品。約700本のビニール傘に3万5千球のイルミネーションを巻き付け、公園の斜面に配置。
 昼も夜も美しさを身近に感じてほしいとの発想はユニークである。ビニール傘と豆電球のコンビネーションが面白く、見て楽しい作品に仕上がっている。

 大学生37名による共同作品で、市のイベントで公園の遊歩道を彩り、道行く人を楽しませた。

奨励賞「Garden Terrace PRIE」

奨励賞 奨励賞

受賞者

  • 見木 志郎ライトスタイル

 使用されていなかったホテル2階部分のテラスをLEDの色の美しさを駆使して、優雅な雰囲気のあるイベントスペースとし、ビアガーデン、ナイトウェディング等の多目的空間を演出した。

 LEDとキセノランプによる省エネ光源を採用しており、シンプルな空間構成とLEDのダイナミックな照明演出手法により、空間全体が照明器具を思わせる作品である。

奨励賞「新宿御苑トイレ増築」

奨励賞「新宿御苑トイレ増築」 奨励賞「新宿御苑トイレ増築」

受賞者

  • 原 健一郎石本建築設計事務所
  • 米山 浩一石本建築設計事務所

 公園トイレの改修に伴い、省エネルギー・環境負荷の低減に資する設備・技術を採用。照明には自然採光や省電力照明・センサーを取り入れ、また、洗浄水には雨水を利用、換気には十分な自然換気開口を設置し、環境志向型公衆トイレを実現した。
 LED照明の効果的利用、ガラスの多用に伴う自然採光の確保等、工夫が見られる。

 今後の公共施設のあり方、考え方への先見性が評価された。

第2回(2004)

「FINSBURY AVENUE SQUARE」

受賞者

  • Maurice BrillMaurice Brill Lighting Design,London

「和泉シティプラザ」

受賞者

  • 山上 義美佐藤総合計画
  • 鳴海 雅人佐藤総合計画
  • 近田 玲子近田玲子デザイン事務所

第1回(2003)

「地球環境戦略研究機関」

受賞者

  • 富樫  亮日建設計
  • 渡邊  薫日建設計
  • 浅野 卓郎日建設計

奨励賞「OVLO2」

受賞者

  • 小園 隆嗣松下電工

奨励賞「川島織物・技術デザイン展ゲノム・フォー・ザ・フューチャー」

受賞者

  • 山下 裕子Y2 LIGHTING DESIGN

照明デザイン奨励賞受賞者一覧

第5回(2002)

「光るラッピングウォール(銀座松屋外装リニューアル)」

受賞者

  • 高島 謙一大成建設

「照明デザイナーが設計した家(I-HOUSE)」

受賞者

  • 松下  進松下進建築・照明設計室

第4回(2001)

「田園調布雙葉学園小学校聖堂」

受賞者

  • 藤田 純也竹中工務店

「Dancing in the Building」

受賞者

  • 的場やすしメディアアーティスト

第3回(2000)

「福岡タワー照明改善プロジェクト」

受賞者

  • 松下 美紀松下美紀照明設計事務所

第2回(1999)

「山陰合同銀行本店における自動調光・点滅制御システム」

受賞者

  • 相原 竜介日建設計

「あいち健康の森健康科学総合センター<あいち健康プラザ>アトリウムの照明」

受賞者

  • 北村 寛松下電工

「代々木の杜パーク・マンションの照明」

受賞者

  • 野澤 壽江近田玲子デザイン事務所

第1回(1998)

「キャロットタワーの外構・アトリウム照明」

受賞者

  • 小林 和夫松下電工

「エコガーデンの外構照明」

受賞者

  • 吉本 操子小泉産業