現存する日本の公立美術館の中で最古の、帝冠様式を代表する建築の改修増築計画である。80年余り、多くの人に親しまれて来た美術館のいきいきとした姿を後世に残しながら現代のニーズに応える「保存と活用」をどのように成すべきかが課題であった。改修増築計画は、西側広場をスロープ状に掘り下げて、かつての地下室を新たなエントランスにすること、そこから東側の日本庭園へ抜ける東西の貫通動線をつくることを骨格とする。可逆性のある慎重な改修と、必要な機能を大胆に挿入・付加するバランスをとりながら、これからの美術館の機能を満たすための整備を行なった。
美術館の内側にとどまらず既存の外構環境を活かした、人の流れを活発にする計画となっている。
1933年創建の美術館の改修・増築計画の一環として、増築部分と既設部分の調和を図るための照明計画上の役割が大きく効果的である。屋内の照明器具は、古い部材を残してシェードの意匠を保存し、ペンダントライトも当初の意匠を復元しつつLED化している。屋外も、照明の色温度を駆使することによって、重厚な古い建築物と軽快な新しい建築物との対比を強調し、メリハリの利いた独創的な照明計画を実現している。夜間の外観のライトアップも美しい。