京都駅前の大通り沿いに位置する宿泊特化型ホテル。中庭は1階平面においてピロティを介して前面道路と外気でつながり、ゲストを非日常へといざなうアプローチを構成する。さらに敷地形状を生かして外周に設けた2つの坪庭を加え、複数の庭園が光と風に移ろいながら、共用部を包み込む。内装は紙と木の質感を基調とし、共用部から客室にわたって展開した。特に客室の1面を占めるアートワークは「山紫水明」をテーマに描いた水彩画を和紙クロスにプリントし、目地張りすることで襖絵のように客室を彩る。外装は、絣(かすり)のように縞状に配した陶磁器質タイルに、銀糸のようなアルミマリオンを織り込み、素材の質感を生かす構成となっている。日暮れとともに和紙シェードを透したやさしい明かりが、行燈のように京のまちに灯る。(2019年3月完成)
近代的なホテル建築に京都の宿のプライベート空間へといざなう演出を照明により実現しながら、昼光を最大限に生かして省エネにも配慮している。全体的に落ち着きを感じさせる設計であるが、レストランなどの要所で照度を高く設定し、メリハリのついた空間となっている。