岐阜県美術館は1982年に開館、37年を経て2019年にリニューアルオープンした。「美とふれあい、美と会話し、美を楽しむ」を理念に、作品を鑑賞するだけでなく、より多彩なかたちでアートを体験できる場の創出を目指している。建築計画とともに照明計画も総合的に見直され、広く多様に使える空間は、美術館の今後の可能性を広げた。
美術館ホールは、照明器具を高さ8mの天井に設置したことで、ダイナミックな空間に変容した。一部スポットは無線通信によるパン、チルト、配光の調整が可能である。展示室1aでは、0~100%の調光が可能な上、レンズ交換によりスポットライトにも変換できるダクト取付ウォールウォッシャにより、様々な場面に対応できるようになった。展示室1dには、展示ケース内に2700K~5000Kの調色・調光LEDライン照明を設置することで、多岐にわたる所蔵品に適応できるようになった。展示室3は、自然光の取り込みを取りやめて暗転が可能になり、ヴォールト天井を間接照明で照らす手法とした。
照明計画は、学芸員による収蔵品の見え方の検証と共に進められた。高演色LED器具の採用は、省エネ目的にとどまらず、制御による高機能化、運用のたやすさ、学芸員の負担軽減につながった。今後、増えていくであろう美術館の改修において、ひとつのモデルケースとして評価できる実例である。