清泉女学院ピラール館は大学看護学部のキャンパスとして、長野駅前にランドマーク的に新設された建物である。臨床現場と同様の実践的講義が可能な施設・設備が完備されている。校章に用いられている白百合の花をモチーフとした多目的ホールでは、照明によってその品格と荘厳な雰囲気が効果的に表現されている。(2019年3月完成)
周囲の景観に調和した白基調の気品ある外観で、夜間はガラス張りの吹抜け空間から暖かみのある光を放っている。吹抜け空間に続く多目的ホール(ラマリョホール)では、光色を3000Kに統一し、白百合の花をイメージした曲線を光のラインで縁取っている。また裏側からのスポットライトによって、十字架を光のグラデーションで浮かび上がらせた。どちらも調光タイプで、シーンに合わせた様々な演出が可能である。歩行動線の明るさを確保するための狭角ダウンライトは、スリットに埋め込むことで、天井面のグレアを抑えている。一方、図書館では導光板を用いた3500K半埋込器具を採用したことにより、天井面の明るさも机上面の照度(500ルクス)も十分な計画となった。講義室では5000Kを採用し、目的に応じた色温度が設定されている。崇高さや荘厳さを光によって具現化しようとした試みと、教育施設としての実用的な照明計画の両面が評価された。