いなべ市役所は、敷地内の樹木を生かした低層分棟型の庁舎である。市民の利便性向上を図るとともに、「行政棟」「議会棟」「シビックコア棟」「保健センター棟」の4棟で構成して、4町の合併を象徴化した。各棟に接する大庇「Baum」は、それぞれをつなぐ役割を担っている。日常的に集う場所=本来の意味での「公共建築」として機能することを目指した。
市民向けのイベントにも使用される大庇「Baum」は、柱上部に上向きにLED照明器具を設置し、広場に膜屋根に反射した光が落ちる照明手法を採用した。
行政棟2階執務室は、勾配屋根を覆う木製ルーバーの間にLEDユニバーサルダウンライトを仕込み、丸形のペンダント照明を付加して、明るさ感を増す手法をとった。方向性を持たない形状と配置で、今後のインテリア変更にもフレキシブルに対応できる設計となった。大空間でありながら、机上面750ルクスを確保している。
議場も同様にLEDユニバーサルダウンライトを木製ルーバー間に設置しているが、天井の起伏に合わせてLED間接照明を配置したことで印象的な議場になった。
屋外には既存の杜を活用して、カフェやベーカリーショップなどの「にぎわいの森」を設けた。周辺環境と調和した落ち着きのある照明計画となった。各棟の特徴を生かしながらも、全体の統一感が感じられる照明計画である。