ここにしかない新しい金沢をテーマに現代建築の中に伝統を感じる要素を外観、内観のデザインに表現することを意図した。外観における金沢らしさとして、客室の1室に2つの窓を配し、彫の深い格子状の外壁を構成した。格子ファサードは、金沢の木虫籠格子の斜めカットを踏襲して窓のダキ部分を斜めにカットし、そこに木目を配することで見る角度によって変化する。1階エントランス部分と最上階には木目の庇を設け、低層部には縦格子のデザインを踏襲することで町屋らしさを演出した。内観は組子、金箔、漆、加賀友禅、越前和紙など北陸にちなんだ伝統的なモチーフを現代的にアレンジするとともに、各所に「現代の金沢アート・クラフト」を配して、伝統と現代の融合を狙った。ランドスケープは、印象的なもみじを中心としながら背後に金沢の武家屋敷の庭を模して常緑樹や石川県産の戸室石の景石を配し、金沢の風景を作ることを試みた。新しい金沢の発見が訪れるゲストの期待感と創造性をかきたてるホテルとなることを目指した。
格子・組子・金箔・漆などの金沢の伝統的なモチーフを外壁・エントランス・展望浴場・客室などの様々な箇所において現代風にアレンジしたホテルであり、ゲストを感動させる仕掛けが随所に見られる。明るすぎず落ち着いた夜の佇まいは、金沢に相応しい夜景を創出している。