本館は国の特別史跡熊本城内に位置し、前川國男の“樹木切るべからず”の設計思想により1976年に竣工している。竣工後40年目に遭遇した熊本地震では、ほぼ無傷であり約40日後に開館している。保全計画に基づいた短期間休館での改修工事が、数年間に渡って行われている。本改修工事では最新のLED照明に工夫を凝らし、設計思想を継承して美術館に適合した光環境を創りだしている。企画展示室3室、常設展示室3室、永青文庫常設展示室、講堂、収蔵庫5室から成り立っており、展示室ではLED化への創意工夫や新方式の導入を行い、ロビー・ホールでは前川的照明のLED化を行い、照明環境とエネルギーが改善された。照明環境改善は美術館に新たな息吹が芽生え、館の健全性や長寿命化に貢献している。
既存美術館の照明設備改修において、既設器具を上手に利用したり新規に検討したりしながらも秀逸な建築空間との整合性や融和を保つ配慮がみえる。絵画などへの光の強さや色温度の多様性を考慮しながら調光・調色をタブレットにより現場でそれぞれに合った制御ができるシステムはすばらしい。